365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> ケマンソウ
花茎にかわいらしいピンクの花を連ねて咲くケマンソウ。20個くらい花がついている長い茎もあり、花の重さに耐える茎のしなやかさ、強さに感心します。■属科・タイプ:ケシ科の宿根草
■花期:4月〜5月
■草丈:40〜60cm
連なるピンクのハートに胸がきゅんとします
観光ガーデンなどでこの花が咲いていると、「うわっ!」と駆け寄る方々の多いこと。私もその1人で、早くアップでハート型のかわいらしい花を見たい、写真に撮りたいと気持ちが急きます。
寺院の仏堂を飾る荘厳具(しょうごんぐ)の華鬘(けまん)に花の形が似ていることがケマンソウの名の由来ですが、鯛が並んで釣れた竿にも見えることから鯛釣草=タイツリソウの名前でも知られています。また、深い切れ込みのある葉がボタンの葉に似ていることからフジボタンという別名もあります。
ハート型の花がいくつも並んでつく花茎はアーチ状に湾曲しますが、なかには花をつけながらも直線的に伸びている花茎もあって、ケマンソウの花茎はしなやかで丈夫だといつも感心しています。
そして、このしなやかな茎が描くラインこそが、ケマンソウの株姿の美しさを生み出しているのだと思います。ケマンソウがあるだけで植栽が優雅な雰囲気になると感じています。
原産地は中国東北部から朝鮮半島で、日本には室町時代の初めに渡来したといわれています。以前は高山に咲く山野草のコマクサと同じコマクサ属に分類されていましたが、現在ではケマンソウ属に変わっています。
ケマンソウはふっくらした花も葉も、株全体がみずみずしい印象で、春のフレッシュな庭によく似合うと思います。古くに渡来した花は、今でも親しまれていて、個人邸の外周りの植栽で見かけることもたびたび。和の庭にも洋風の庭にも似合う取り入れやすい宿根草です。
なお、全草に毒があるので誤食しないように気をつけてください。
すでに10個の花が咲いていますが、茎の先端にはまだ蕾が開花準備中。ハート型の花がイヤリングのように吊り下がるのもかわいらしい!栽培の難易度
落葉樹の下などのやや湿った環境を好むので、強い日差しが当たる場所は避けます。一日中明るい日陰となり、水はけ・水もちともによい土壌に植えます。植えつけ時に元肥を施し、たっぷりと水やりします。地植えの場合は、表土が乾いたら水やりをし、乾燥させないようにします。3月と9月に緩効性肥料を施します。秋〜冬は地上部が枯れて休眠するので追肥は行わないようにします。ケマンソウの根はゴボウのように太く、休眠中も地中でしっかり生きているので、土壌がからからに乾いたら休眠期でも水やりをします。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。