365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
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淡いピンクから白へのグラデーションが優しく軽やかな雰囲気のハルジオン。どこでも見かけられますが、あらためて花をアップで見ると繊細でとてもかわいらしい!■属科・タイプ:キク科の宿根草
■花期:4月〜6月
■草丈:30〜80cm
牧野博士が名づけた花が、すぐそばで咲いていますよ!
「なんだぁ、そこら辺で見かける雑草か〜」。まあ、そうおっしゃらずに。本日、ハルジオンをご紹介するのには理由があるのです。
植物好きの方は、今日から始まるNHKの連続テレビ小説『らんまん』を楽しみにされていると思います。『らんまん』は日本の植物分類学の礎を築いた牧野富太郎博士をモデルにした物語です。牧野博士は日本全国を巡って植物の標本を集め、発見した新種や新品種など約1500種以上にも及ぶ植物に名前をつけた方です。
そして、北アメリカから渡来し、大正時代には自生が見られたエリゲロン・フィラデルフィクスにハルジオンという和名を与えたのも牧野博士なのです。博士が名付け親の植物がこの時期ならすぐ身近で見られます。
ハルジオンという和名は、秋に咲くシオンに似た花が春に咲くから、という至ってシンプルな理由でつけられました。とてもよく似ている花にヒメジョオンがありますが、こちらは誰が命名したのかはっきりしないそうです。
ハルジオンとヒメジョオンの違いは、まず開花期です。4月から咲くハルジオンに対し、ヒメジョオンが咲き出すのは5月に入ってから。だから、今咲いているのはたいていハルジオンです。両方が同時に咲く5月~6月であれば、花を観察して見極めましょう。花弁が多く繊細で、蕾が下向きについているのがハルジオンです。
こちらはヒメジョオン。花弁がハルジオンより少なくパキッとした花形をしています。どらかというとヒメジョオンのほうが秋に咲くシオンに似ているような気もしますが…。さて、私はハルジオンが咲いているのを見かけると決まって、ユーミンの『ハルジョオン・ヒメジョオン』の哀愁を帯びたメロディが頭の中に流れます。最近ではYOASOBIにも『ハルジオン』という曲があり、ハイテンポながら聴き終わると切ない気持ちで胸がいっぱいになります。群生して軽やかに花を咲かせている雑草でありながら、ハルジオン、ヒメジョオンには、なぜか切ない記憶を蘇えらせる雰囲気があるのかもしれません。
栽培の難易度
ハルジオンは道端や公園などでよく見かける、いわゆる雑草なので、タネや苗が出回ることはほとんどありません。むしろ、いつの間にかはびこってしまい、除去したいという方のほうが多いと思います。ただ、黄色の筒状の花弁には蜜がたっぷり含まれ、蝶やミツバチにとっては貴重な蜜源植物となっています。蝶やミツバチを庭に呼び込みたい方は、少し残しておくのもよいと思います。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。