藤野幸信さんが選ぶ「季節の贈り花」 今、この花を贈りたい! 「フルール トレモロ」オーナー 藤野幸信さんが“今贈りたい”おすすめの花をセレクト。その花を使った、新作ブーケ&アレンジメントをさまざまなバリエーションでお届けします。
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ブルーが印象的なニゲラですが、白い花弁に花心が黒の個性的な品種もあります。お披露目も兼ねて‘アフリカンブライド’をトップで紹介します。ちょうどこの時期に出回るミモザと合わせ、ラナンキュラスやシレネ、金葉アカシアを加えて束ねました。寿退社されるチームリーダーさんに仲間からのお祝いと感謝の贈り花です。軽やかで繊細。でも、贈り花では頼りがいがあります
花名のニゲラとはラテン語で「黒い」を意味します。真っ黒いタネをつけることが由来で、和名もクロタネソウ(黒種草)といいます。庭で咲くのは晩春から7月上旬頃ですが、切り花では真夏を除いてほぼ一年中出回ります。花の回りを苞(ほう)と呼ばれる糸状の葉が覆っているのが特徴で、その繊細な姿は贈り花をナチュラルに仕上げるのにとても効果があります。
ニゲラの魅力は、何といっても爽やかなブルー系の花色です。この青花は贈り花を制作するうえで欠かせません。青い花を好まれる方はとても多く、ブルー系でというオーダーをいただくこともよくあります。また、ブルーがメインではない贈り花でもアクセントとして大活躍するので、真夏を除いてほぼ入手できるニゲラは、本当に頼りになる存在です。
そして、花色では少ない貴重な青花の中でも、ニゲラほど透明感があり、軽やかな印象のブルーはないと思います。切り花では‘ミスジーキル’という品種がメインで出回り、この品種には濃淡のブルーと白のほかピンクもあります。
ニゲラといえばこの爽やかなブルーの花色と繊細な草姿。花を取りまく緑色の苞がナチュラルさをよりアピールします。これは「折原園芸」さんから届いた‘ミスジーキル’です。11月中旬から6月までは、千葉県南房総市にある「折原園芸」さんが生産するニゲラを入手することが多いのですが、折原さんのニゲラは花屋仲間の間でとても人気があります。ニゲラは時間が経つと花びらがパラパラと散ってくるのですが、折原さんが生産するニゲラは、花もちが驚くほどよいのです。余裕で1週間以上もつため、安心して贈り花に利用できます。
繊細な茎も花姿もそのままで、どうしてこんなにもちのよいニゲラを作ることができるのか、いつも不思議に思っています。こういうクオリティの高い花に出会うたび、花を生産する方々へのリスペクトが高まっていきます。
さて、ブルーが魅力のニゲラですが、最近では個性的な品種も出回るようになっています。その一つが‘アフリカンブライド’という品種です。透け感のある白花ですが、中心にあるしべが真っ黒でよく目立ちます。他の花と合わせると、その黒が絶妙にしゃれたアクセントとなってくれます。
個性的な花色でありながらとても使いやすい品種で、私のお気に入りのニゲラです。一重の花のすっきりした花形も美しく、このニゲラが出回る時期には必ず入手しています。出回る品種が増えたことで、ニゲラは私にとってますます欠かせない花になっています。
藤野幸信/Yukinobu Fujino
広島駅からほど近い段原の骨董通りにある「fleurs trémolo」(フルール トレモロ)オーナー。広島大学大学院理学研究科生物科学専攻を終了後、花の道に進んだ異色の経歴。感動する花束を多くの人に届けたいという思いから、市場からだけでなく自ら生産者情報を入手してお気に入りの花を集める。何種類もの花を使ったブーケは、エレガントでナチュラル。著書
『大切な人への贈り花』も好評。
https://www.fleurs-tremolo.com 『人気フローリストが教える フラワーアレンジのデザイン&ヒント78 大切な人への贈り花』
誕生日、結婚記念日、ウエディングなど、78例のブーケ&アレンジメントを色別に掲載したオールカラーの大判の単行本。色別花図鑑コラムや全国の生産者データなどお役立ち情報やインデックスも充実。大切な人へ花を贈る際のヒントが満載です。