時代の主役たち・長澤まさみさん
衣装の詳細はフォトギャラリーで解説。「できるようになったと思わず、慣れない気持ちも大事にしたい」
長い手足をのびやかに動かし、楽しそうにポーズを繰り出す長澤まさみさん。潑剌とした笑顔が弾けます。ところが、新作映画『ロストケア』では、そんな笑顔を封印。介護の現場で起きたある犯罪と対峙する検事を毅然と、ときに苦悩を滲ませながら演じています。
「親の介護というのは、誰もが直面することですよね。自分事と考えたとき、どのように向き合うのか。私自身は『家族が家族の面倒を見るべき』というある種の固定観念に、どこか違和感を覚えていたので、この作品がすごく心に留まって演じてみたいと意欲が湧きました」。
将来についても、日頃からご両親とよく話をするといいます。「私だったらこうしたいと想像することで、両親の思いや選択を受け入れることができるんじゃないかなと思うんです。お互いの気持ちを尊重したいですから」。
映画では、殺人に手を染めた心優しい介護士に、長澤さん演じる検事が法の正義と常識を武器に立ち向かいます。
「(介護士を演じる)松山ケンイチさんとは初めてご一緒したんですが、2人のシーンを撮影したとき、あまりにも目がきれいで見とれてしまったんです。松山さんのくもりのない美しい目に吸い込まれそうになって、それがまるで、検事の立場でありながら心を持っていかれそうになる私の役柄とリンクしているような感覚になったことを覚えています」。
衣装の詳細はフォトギャラリーで解説。観客一人一人に委ねられる判断や、突きつけられる過酷な現実。昨年話題を呼んだ主演ドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』しかり、見る者の心に波紋を起こす社会派作品での難役が続いていることについて尋ねると
「そうですね。演じるうえでも考えることが多いので、なかなか脳が休まらなくてオンとオフのスイッチを切り替えることが難しいです。お芝居に集中するためには、基本は睡眠をとること。ご飯もなるべく自分で用意して体と心を整えるようにしています。時間ができたらお料理教室に行きたいですね。それから今年は、運動も頑張ろうと思っています。40代に向けてコツコツと(笑)」。
現在35歳。俳優として重ねたキャリアは20年を超えました。
「20年といっても気持ちは何ら変わらないんです。初めて行く現場はちょっと苦手だし、緊張もします。いつまでたっても慣れない。でも『できるようになった』と思うほうが、自分にとってはよくなかったりするので、慣れないという気持ちも大事にしています。年齢とともに挑戦の幅も広がって、安心感が得られるというのか、年齢を重ねるっていいこともたくさんあるものだなと思います」。
衣装の詳細はフォトギャラリーで解説。長澤まさみ1987年静岡県生まれ。2000年、第5回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリを受賞し、映画デビュー。2004年、映画『世界の中心で、愛をさけぶ』で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞。以降『モテキ』、『海街diary』、『MOTHER マザー』などの映画、ドラマ、舞台など数々の話題作で活躍。介護問題に切り込んだ社会派エンターテインメント映画『ロストケア』(2023年3月24日公開)で、松山ケンイチさんと初めて共演する。 表示価格はすべて税込みです。
撮影/篠山紀信
スタイリング/上杉美雪〈センス オブ ヒューモア〉 ヘア&メイク/根本亜沙美 取材・文/河合映江
『家庭画報』2023年4月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。