365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
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清楚な白花のフロックス・ディバリガタ。白いレースのように繊細でロマンチックな群生を見てから、この花が大のお気に入りになりました。■属科・タイプ:ハナシノブ科の宿根草
■花期:4月〜6月
■草丈:20〜40cm
美しい花色で地面を覆うフロックスが素敵です
フロックスの仲間はとても多く、世界で67種が知られています。
オイランソウのように草丈が高くなるタイプがよく知られていますが、なかには這うように横に広がる性質のフロックスもあります。その一つがフロックス・ディバリガタです。
和名をクサキョウチクトウといい、白と淡い紫の花色があります。観光ガーデンの壁際で、白花のディバリガタが地面を覆うようにふんわりと咲いているのを見たとき、あまりに清楚でロマンチックな景色に「なんて素敵なんだろう!」と見惚れて以来、私はこの花が大好きになりました。
友人の庭では‘ホワイトパフューム’という園芸品種が群生して咲きますが、なんとこの花には石けんのような爽やかな香りがあります。草むらの中に咲く景色がとてもナチュラルで、毎年この時期にはこの花を見たくて訪ねています。
まだ咲き残るスイセンやイベリスなどと一緒に、濃淡ピンクのシバザクラが咲く景色に観光ガーデンで出会いました。絶景とは異なる、ナチュラルな雰囲気に魅力を感じます。這うように広がって育つフロックスには、皆さまよくご存じの種類もあります。この時期によく絶景で話題になるシバザクラで、学名はフロックス・スプラータ。濃淡ピンクや白の花色が描くパッチワークのような光景は素晴らしいと思いますが、私はむしろ庭で小さな群生になって咲くナチュラルなシーンのほうがかわいらしくて好きだなと感じます。
もう一つ、ツルハナシノブという素敵な和名で知られるフロックス・ストロニフェラも這性で、淡い紫色の花が地面を覆うと何とも上品でしゃれた景色になります。この淡い紫の花色は、和風の庭にもよく似合い、昔から庭で咲かせているお宅も多くあります。
私の実家でも門から玄関への通路沿いに小さな群生になって咲いていましたが、とくに管理をしなくても毎年この時期に花を咲かせていたので、春の記憶の一つとしてその光景が心に刻まれています。
地面を覆うように育つ植物のことをグランドカバープランツといいますが、春にはとくにかわいらしい花を咲かせる種類が多いので、散歩道でも足元に咲く花を見落とさないようにしてください。
栽培の難易度
日なたを好みますが、明るい日陰でも育ちます。水はけがよい土壌を選び、元肥を施してから植えつけます。植えつけ時にたっぷり水やりすれば、あとは雨まかせでかまいません。ただし、土壌がからからに乾いたときは水やりをします。追肥の必要はありません。開花が終わったら、全体を半分くらいの草丈に切り戻しておくと、そのままこんもりと葉が茂ります。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。