五感を刺激する新たな滋賀の旅へ！ 自然と人、文化を繋ぐ「シガリズム」体験

自然素材の力を再発見！
「山脇源平商店」で真綿作り

夏は涼しく、冬は暖か。しっとりと体に吸いつくような掛け心地が魅力の真綿布団。かつては町の布団屋さんに当たり前にあったものですが、現在、真綿布団を作る工房は全国でもわずか数軒に。そのうちの1軒が、米原市で270年の歴史を持ち、江戸時代と変わらない製法で近江真綿の伝統を守る「山脇源平商店」です。

真綿作りの始まりは、原料となる蚕の繭を煮て柔らかくすることから。その後、水中でほぐした繭を丁寧に引き伸ばして木枠に重ね、シート状の「角真綿」を作る作業へ。それをゆっくりと乾燥させ、2人がかりで引き伸ばして布団の形にしていきます。




角真綿を作る様子。均等な厚さに広げるには熟練の技が必要。角真綿1枚当たり4個の繭を重ねて作り、それを数百枚重ね合わせて1枚の真綿布団にする。布団1枚を製作するために使用する繭の数は約3000個にも及ぶ。



角真綿を2人で引き伸ばし、布団の幅にする「手引き」の作業。蚕の繭は1400mもの長さの1本の糸で形づくられているため、真綿は超長繊維の素材。羽毛やコットンに比べても圧倒的にほこりが出にくいという特徴があり、ハウスダストなどのアレルギーに悩む人にも重宝されている。

山脇源平商店では、角真綿作りと乾燥させた角真綿を布団の大きさに引き伸ばす「手引き」の工程を体験することができます。また、9代目山脇和博さんによる真綿の歴史講座も聴きごたえ十分。4000年ともいわれる人と真綿の関係や、真綿ならではの優れた性質について学び、蚕が生み出す素材の神秘に触れましょう。



江戸時代に出版された養蚕の解説書『養蚕秘録』には、木枠を使って角真綿を作る様子が描かれている。

角真綿作り体験をしていると、長時間お湯に手をつけて仕事をしているのに、職人の手が驚くほどすべすべなことに気づきます。これは繭に含まれるセリシンという保湿成分によるもので、仕事を休むと逆に手荒れが気になってくるという人も。こうした効果を生かし、スキンケア用品を作るなど新たな取り組みも行っています。



9代目の山脇和博さん。日本の純国産真綿を未来へ残すために、今の暮らしに合う製品展開に力を入れる。2016年からは耕作放棄地を活用して桑園を作り、養蚕から産業の復活に挑んでいる。

体験後、自分で作ったハンドタオルほどのサイズの角真綿は持ち帰りが可能。洗顔やマッサージに使えば肌の調子を整えてくれ、日常の中でも真綿の魅力を身近に感じられるはずです。

自然に溶け込むスイーツの殿堂
「ラ コリーナ近江八幡」

滋賀県随一の人気スポット「ラ コリーナ近江八幡」。この地で創業150年を迎えた和菓子店「たねや」とバームクーヘンが人気の「クラブハリエ」のフラッグシップ店でありながら、単なる店舗の枠を超えたお菓子のテーマパークともいうべき場所です。



敷地に足を踏み入れると建築史家・藤森照信氏による草葺き屋根の建物がお出迎え。お菓子作りは自然の恵みあってこそという考えのもと、「自然を愛し、自然に学び、人々が集う繋がりの場」として2015年にオープンした。

広大な敷地の中心には田んぼが広がり、それを囲むように店舗やカフェ、パンショップなどが立ち並びます。メインショップの屋根は芝で覆われ、カステラショップは100本以上の栗の木を自然の風合いそのまま柱に利用。建物内でも山や森を感じさせる工夫が随所にちりばめられています。

緑に癒やされる心地よい空間でスイーツが味わえるのはもちろん、カステラに使う卵で作ったオムライスや、地元の名物である赤こんにゃくが入ったライスコロッケなど、ここならではの軽食メニューもおすすめです。



〈右上から時計回りに〉クラブハリエ自慢の「焼きたてバームクーヘン mini」ドリンクとセットで1170円、シチリアの郷土料理をヒントに、卵をトマト風味のご飯で包んだライスコロッケ「アランチーノ」1個400円、焼きたての食感と卵の風味を楽しめる「焼きたてたねやカステラ」ドリンクとセットで1039円、いりことかつおの香ばしい出汁あんをかけた「カステラたまごのオムライス」880円。

そんなラ コリーナ近江八幡に、今年新たに誕生した「バームファクトリー」は、生地作りから焼成、包装まで、お菓子ができる工程を間近で見学できるバームクーヘン専門店。



「バームファクトリー」店内の様子。1階はショップとバームクーヘン工場、2階にはカフェがある。工場見学用の通路には歴代パッケージの展示なども。

焼きたてのバームクーヘンや限定商品を展開するショップも併設し、クラブハリエの全ラインナップからお気に入りを探すことができます。



バームクーヘンを焼き上げる様子が目の前で見られるショップ。しっとりふわふわの食感は焼きたてならでは。

まるで小さな里山のようなラ コリーナ近江八幡は、現在まだまだ拡大中。人と自然を繋ぐ壮大な構想は、訪れるたびに私たちをわくわくさせてくれます。