母親としても社長としても厳しさの中に愛情を
美恵子 今でこそ、社会に出て働く大人同士としてこんな話もできるけれど、あなたがアナウンサーになると言い出したときには驚いたわ。
真麻 学生の頃から自分の言葉でニュースや情報を伝える仕事に興味があったのだけれど、パパとママにはなかなか言い出せなくて。小さい頃から父親の名前に傷をつけてはいけないと思って育ったので、「高橋英樹の娘はテレビ局を落ちてフリーのアナウンサーになった」と言われるくらいなら全く別の業種に就職しようと思っていたの。
美恵子 テレビ局のアナウンススクールに通い始めても、なかなか本当のことを言わなかったので、実はアナウンサーになりたいのだと知ってパパも私もびっくりしたのよ。でも、それまでもやりたいことは何でもやらせる主義だったので見守り、応援することにしたの。
真麻 やっとの思いでフジテレビに合格してからも、最初の5〜6年は仕事に恵まれなくて。ようやく自分のキャラクターを生かした仕事ができ、親の名前を気にすることなく自己責任でいろいろなことを選択できるようになったのは30代になってから。子どもが生まれた今も働き続けたいと思うのは、もちろん経済面もあるけれど、自己実現のために、という気持ちも大きいかもしれません。
美恵子 お世話になった会社を離れてフリーアナウンサーになってしばらくは、母と娘であると同時に事務所の社長と所属タレント、という関係でもあったわね。
真麻 普通、アナウンサーは退社前に次の所属先を決めるらしいのだけれど、私は何だかそれでは会社に失礼な気がして辞めてから考えればいいかと思っていたの。そうしたら「今後の仕事の話はどちらに連絡すればいいのか」とお問い合わせをいただいて。それではとりあえず父の会社を連絡先に、ということに。でもママには「親子揃っては抱えられないから、他所に行って」と言われたのよ。
美恵子 そんなこと言ったかしら?
真麻 そもそもマネージャーさんから間接的に「社長が真麻さんはよくやっていると言っていましたよ」と聞くことはあっても、面と向かってはなかなか褒めてもらえないし。パパなんて、ママと私が仕事のことで言い合いになったら「従業員が社長に口答えをするな」って怒るんですもの。
美恵子 それではあらためて褒めますけれど、真麻はとにかく多方面によく頑張っていますよ。自分がこう、と決めたら芯がブレないのも素晴らしいこと。よく言えばしっかり者、悪く言えば頑固ね(笑)。
真麻 ほら、やっぱり褒めていないじゃない(笑)。でも自分が2人の子どもの母親になってみると、あらためてパパとママに感謝することもあります。子どもの人生を背負っていくって、責任もあるし、怖さもあって。あの頃、ママも今の私のような気持ちだったのかしらと考えさせられます。パパとママが私に対して整えてくれた環境を子どもたちに提供していけるだろうか、と考えることも。
美恵子 こちらとしてはどんなことでもサポートしたい気持ちなのだけれど、真麻は私たちの手を借りたがらないのよね。
真麻 どうせご両親に手伝ってもらっているのでしょう、と言われるのが悔しいので、なるべく両親にもシッターさんにも頼らずに頑張っていこうと思って。
美恵子 仕事をして疲れて帰ってもしっかり母親業もこなしているのは偉いわね。それに私たちと違ってむやみに子どもを叱らない、優しいママだと思います。真麻の育児を見ていると、こういう育て方が今の時代に合っているのだなと新鮮な気持ちになることも。パパとも「真麻がこんなにいいママになるとは思わなかった」と、いつも話しているのよ。
インタビューの続きは後日配信の特集第2回で紹介します。 〔特集〕母娘(おやこ)いっしょにもっと元気で、いきいきと
撮影/猪俣晃一朗 スタイリング/寳田マリ(真麻さん) ヘア&メイク/仲嶋洋輔〈ペールマネージメント〉(美恵子さん) 根本茉波(真麻さん) 取材・文/清水井朋子 撮影協力/グランドプリンスホテル高輪 真麻さん衣装・ワンピース5万2800円/コルコバード(フィルム TEL:03-5413-4141) イヤリング1万1000円/ステラハリウッド (TEL:03-6419-7480) 靴9万7900円/ジミー チュウ(フリーダイヤル:0120-013-700) 時計/真麻さん私物
『家庭画報』2023年4月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。