桜花爛漫 桜を守り、伝えるということ 第9回(全12回) 春が来るたび、私たちの目を楽しませ、心癒やしてくれる桜。地域の子どもたちからプロフェッショナルまで、私たちの“宝”を守り、未来に繫げる桜守の物語とともに、とっておきの桜絶景をご紹介いたします。
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「日本一の桜の里」を目指し、市内に1万2000本以上の桜がある伊那市を中心に伊那谷には古くから桜を地域の宝とみなし、大切にする文化が存在します。咲き誇る桜のそばには必ず、熱心に世話をする人の姿がありました。
宝積山 光前寺(長野県・駒ヶ根市)
枝垂れ桜のカーテン越しに見る仁王門。花色や建築物がはっきり見える昼間も、光と影のコントラストが幻想的な夜間も、それぞれ見ごたえがある。枝垂れ桜と名庭、霊犬…南信州の名刹
不動明王をご本尊とする天台宗別格本山 宝積山 光前寺の開基は、西暦860年。約6.7ヘクタールが国の名勝に指定されている境内は、樹齢数百年の杉の巨木群が悠久の歴史を感じさせます。
左・南信州唯一の三重塔は長野県宝。凜とした早太郎像に守られて。右・澄んだ空気が気持ちいい杉並木参道。石垣の隙間からヒカリゴケが見える。同寺は700年ほど前、境内で飼われていた山犬の“早太郎(はやたろう)”が怪物を退治したという「霊犬早太郎伝説」が有名です。
近年、寺はアニメに登場。愛らしい早太郎おみくじが人気に。桜の名所となったのは近年で、桜好きだった先代住職がたくさん植えた枝垂れ桜が評判となり、檀家の協力もあって現在は約70本が境内に。
現住職の吉澤道人さんが「枝垂れというからには、私は自分の目線くらいまでは垂れていてほしいので、造園業者さんに頼んで、あまり下枝を切らないでもらっているんです」と話すとおり、足元近くまで垂れている枝も少なくありません。
住職 吉澤道人さん(よしざわ・どうにん)39代目住職。「1100年の歴史を持つお寺なので、1100年後の未来までこの環境を保ちたいですね」。お気に入りの紅枝垂の若木の前にて。そのため、大木の枝垂れ桜は、滝のようにもドームのようにも見え、特に夜間にライトアップされた姿は幻想的な美しさです。駒ヶ根は春でも夜は寒く、氷点下12、13度になることもあるので、夜のお花見には暖かい服装でどうぞ。
Information
宝積山 光前寺(ほうしゃくざん こうぜんじ)
長野県駒ヶ根市赤穂29
撮影/本誌・西山 航 取材・文/清水千佳子
『家庭画報』2023年4月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。