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弁当をおもてなし料理に昇華。松花堂弁当を創始した大阪の名料亭「高麗橋吉兆」

2023.03.28

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特別席&料亭でいただく、テイクアウトで楽しむ 花見弁当で春を味わう 第6回(全12回) 水温む陽気とともに心も浮き立つ春、今年はお花見弁当を目当てに出かけてみてはいかがでしょうか?京都の特別席で、料理店でいただく洗練の味と、春の集いに持ち寄りたいテイクアウトの美味をご紹介します。前回の記事はこちら>>

弁当をおもてなし料理に昇華。
「松花堂弁当」を創始した大阪の名料亭
高麗橋吉兆


高麗橋吉兆

左上から時計回りに、白魚のかき揚げ、合鴨ロース、だし巻き玉子など多彩な味が楽しめる八寸。お造りは鯛、いか、しまあじに大葉を添えて。ご飯は鯛の棒寿司と俵むすび。棒寿司は淡い味ながら、次第にうまみが広がる。筍、ほうれん草、しいたけの炊き合わせ。料理は一つ一つていねいに作られ、奥深く繊細な味わい。


蓋を開けた瞬間、その美しさに目を奪われます。「松花堂弁当」の4つに仕切られた升には、春の息吹に満ちた料理の数々。考案したのは「吉兆」の創始者である湯木貞一氏。

昭和初期、まだ30代の気鋭の料理人であった湯木氏は、ある日、江戸時代の風流人・松花堂昭乗の庵跡で開かれた茶会に出向き、昭乗が小物入れとして使っていた四角い箱を目にします。また、昭乗の庵を持つ寺で「お齋(とき)」(法事や法要で振舞われる食事)の折、容器として使われているのを見て、「これに小さな器を入れ、懐石の略式である点心を入れたらどうだろうか」と考えました。そうすれば、冷たいものは冷たく、温かいものは温かくお出しすることができます。

それは、湯木氏が大切にした懐石料理の“おもてなしの精神”を宿した、今までにない様式の弁当でした。

高麗橋吉兆

書院造りの「手習の間」。掛け軸は江戸時代の浮世絵師・耳鳥斎(にちょうさい)の「花見」。竹工芸家・飯塚小玕斎(しょうかんさい)の花器には啓翁桜。

現在、「高麗橋吉兆」の松花堂弁当にも湯木氏の思いが生きています。“和敬清寂”を感じさせる部屋でいただけるのは、季節を映した見目麗しい料理の数々。

高麗橋吉兆

深みがあり澄んだ味わいのお椀。蛤真薯やわかめ、菜花など、春爛漫。合わせ蛤の器で供される突き出しは、帆立やわらびなど、余韻も繊細。

湯木氏の孫に当たるご主人・湯木潤治氏は語ります。「祖父は、常にお客さまにとっての“食べごろ”を考えていました。松花堂弁当は、当店の入り口でありながらも、『吉兆』の心を表すもの。とても大切なものです」


家庭画報特別プランのご案内


高麗橋吉兆

場所/大阪市中央区高麗橋2-6-7
期間/2023年3月20日〜4月28日
内容/高麗橋吉兆の座敷にて、突き出し、松花堂弁当、お椀、果物。
料金/1名1万8975円
予約・お問い合わせ/高麗橋吉兆 TEL:06(6231)1937
2日前までに要予約。予約時に「家庭画報を見て」と一言。
※料理内容は食材等の都合により変更になる場合があります。


撮影/越田悟全 取材・文/安齋喜美子
『家庭画報』2023年4月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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