最も好きな役を演じる喜び
ミュージカルで私が最も好きな作品として3本の指に入るのが今回ルーシー役で出演させていただく『ジキル&ハイド』です。
初めて拝見したのは鹿賀丈史さん主演の初演のとき。当時10代だった私はマルシアさんが演じられていたルーシー役に憧れて、いつかあの役を演じてみたいと思っていました。
そして2012年にエマ役でお話をいただき、実際に携わってからは、作品への理解がますます深まりました。どのシーンを切り取ってみても人物の心理描写が細かくて、すごく考えさせられるんです。
自分の人生とは時代も違いますし、全くかけ離れた物語なのに、なぜか自分の身に起きてもおかしくないと思わせてしまう。脚本も音楽も“素晴らしい”のひと言に尽きます。
また、どの曲も大ナンバーなので演出によってはコンサートのようになってしまいますが、演出の山田(和也)さんが登場人物の感情から曲への流れをきっちりと作ってくださるので演劇として成立していると思います。
役作りに関しては『ミス・サイゴン』の演出補のダレン・ヤップさんから教わったことを今も心がけています。キムを演じるにあたって、キムが両親に宛てた手紙を書いてみるようにとすすめられました。
それを実践すると、キムの幼少期のこと、兄弟や両親との関係性、何を食べて育ったのか、どんなにおいのするところで生活していたのかなど、どんどんイメージが膨らんでいきました。書き終わったときには、空気やにおいまでを体感しているような気がしたんです。
さらに「作品に挑むときは心と体をいちばん大切にしなさい」とも助言してくれました。ルーシー役でもこの経験を活かして、自分の時間も大切にしつつ、しっかりと役に向き合いたいと思います。
笹本 玲奈(ささもと・れな)
1985年千葉県生まれ。1998年にミュージカル『ピーター・パン』で5代目ピーター・パンを演じ主演デビュー。2007年「第32回菊田一夫演劇賞」演劇賞、2008年「第15回読売演劇大賞」優秀女優賞・杉村春子賞を受賞。主な出演作に『レ・ミゼラブル』、『ミー&マイガール』、『ミス・サイゴン』、『マリー・アントワネット』、『ジキル&ハイド』、『メリー・ポピンズ』、『東京ラブストーリー』など多数。
ミュージカル『ジキル&ハイド』
人間の光と闇を描いたR.L.スティーヴンソンの原作と「時が来た」をはじめフランク・ワイルドホーンが手がけた壮大で印象的な楽曲が彩る傑作ブロードウェイ・ミュージカル。2001年11月に日本初演され、再演を重ねてきた。
出演はヘンリー・ジキルとエドワード・ハイド役の石丸幹二、柿澤勇人、ルーシー・ハリス役の笹本玲奈、真彩希帆、エマ・カルー役のDream Ami、桜井玲香ほか。
東京国際フォーラム ホールC~2023年3月28日
S席1万4000円(全席指定)ほか
ホリプロチケットセンター:03(3490)4949
URL:
https://www.tohostage.com/j-h/※名古屋、山形、大阪公演あり
表示価格はすべて税込みです。
撮影/岡積千可 構成・文/山下シオン
『家庭画報』2023年4月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。