365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> ハニーサックル
筒状の繊細な花が個性的なハニーサックル。オレンジ色や濃淡ピンク、白などの花色があり、華やかな景色を生み出します。■属科・タイプ:スイカズラ科のつる性常緑花木
■花期:5月〜7月
ほのかに甘い芳香で開花を知らせてくれます
散歩道にあるお宅のフェンスで毎年楽しみにしているハニーサックルが咲き始めました。
ハニーサックルとはスイカズラ科スイカズラ属のつる性花木を総称する英名で、学名のロニセラでも知られています。スイカズラのことです、といったほうが通りがよいのですが、日本原産のロニセラ・ジャポニカの和名がスイカズラなので、混同しないように、ここではハニーサックルとして紹介します。
ハニーはハチミツ、サックルは吸う。花に甘い蜜がたっぷりあり、ミツバチなどがよく吸いにくることが名前の由来です。スイカズラも「吸う」につる性植物全般を指す「葛」を合わせた名前で、命名の由来については世界共通の認識のようです。
ハニーサックルの原産地はおもにヨーロッパからアフリカの北西部にかけてで、北半球に広く分布。ほのかに甘い爽やかな香りをもつ種類が多く、ヨーロッパでは古くからハーブとしても利用されてきました。
日本原産のスイカズラも芳香があり、江戸時代、徳川家康はスイカズラを漬け込んだお酒を愛飲していたそうです。ちなみに6月になってから朱赤の花を咲かせるツキヌキニンドウもロニセラの仲間で、明治初期に日本に伝わりましたが、これは香りをもちません。
散歩道で日本原産のスイカズラがフェンスに絡まって咲いているのを見かけました。冬でも葉を落とさず寒さに耐えている様子から忍冬と書いてスイカズラと読ませることもあります。ハニーサックルは旺盛に枝を伸ばすため、フェンスに絡めたり、アーチ仕立て、パーゴラ仕立てなど、さまざまな仕立てで楽しめるのも魅力です。これからバラが咲く季節を迎えますが、ハニーサックルが生み出す景色は、バラとはまた異なる繊細で優しい雰囲気があります。
そんなハニーサックルをこよなく愛する友人がいて、ハニーサックルを見かけると、条件反射のように彼女の笑顔が頭に浮かびます。
じつは、ロニセラの仲間を総称するハニーサックルという呼び方も彼女が教えてくれたもの。花でつながる友人がいることをとても幸せに感じています。
栽培の難易度
耐暑性、耐寒性ともに強く、生育旺盛で丈夫な性質です。日当たりがよいほうが花がよく咲きますが、午前中だけ日が当たり、午後からは日陰になるような場所でも育ちます。枝がぐんぐん伸びるので、フェンスやアーチなど枝を絡める仕立てをあらかじめ準備しておくことが大切です。水はけのよい場所を選び、元肥を施してから植えます。水やりは雨まかせでかまいませんが、雨が降らない日が続いて土壌が乾燥しているときには株元に水やりします。枝が伸びながら新しい花芽をつけていくので、随時、伸ばしたい方向に枝を誘引します。長すぎる場合は、花が一段落したところで切り戻すと、枝分かれしてさらにボリューム感が出ます。1月〜2月に枯れ枝を取り除き、込んでいる箇所を間引く剪定を行います。同時に緩効性肥料を株元に施します。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。