365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> ジギタリス
ジギタリスは長い花穂が魅力。ピンク&クリーム色系の色合いが優しい印象。花の中の斑点もよいアクセントになっているように感じます。■属科・タイプ:オオバコ科の二年草
■花期:5月〜6月
■草丈:40〜180cm
個性的な花をつける長い花穂がバラを引き立てます
英名はフォックスグローブ、それを訳して和名はキツネノテブクロ。キツネの手にこれがはまるのだろうか、という疑問はさておき、花名の由来となった筒状の花は本当に個性的な形をしています。
中を除くと点々と斑が入り、これを美しいと感じるか、少しグロテスクと思うかは人それぞれだと思います。私はとてもおもしろい斑だといつも花の中を覗き込んで見入ってしまうのですが、最近では斑がないことを売りにした品種も登場しているので、斑がないほうがもっときれいと感じるかたも多いのだろうと思います。
これからバラの季節を迎えますが、バラが咲いているすぐ近くでジギタリスを見かけることがよくあります。これはイングリッシュガーデンでは昔からの定番で、丸い花形のバラと草丈がある穂状の花を対比させることで、よりインパクトのある景色に、という意図があります。
たしかにバラばかりの景色より、ジギタリスのような穂状の花が加わった景色のほうが変化に富んだ表情になると私も感じています。何よりバラと開花期間がほぼ同じというのが、お互いを引き立て合う関係の基本条件です。
ジギタリスにはパステル調の優しい花色が豊富にあり、それもバラとよく組み合わせる理由の一つではないかと思います。
最近ではジギタリスとイソプレクシスを交配したハイブリッドジギタリスも登場し、今までにない鮮やかな花色も楽しめるようになっています。初めて見たときには、これまでとは異なる雰囲気で驚きましたが、花壇の中でこの新しいジギタリスが咲いているとよく目立ち、アクセントとしてとても効果的だと感じました。
観光ガーデンではよくハイブリッド系も利用しているので、花色が鮮やかなジギタリスを探してみてください。
バラが咲く手前にジギタリス。イングリッシュガーデンの定番花合わせです。ジギタリスの草丈の高さが、ちょうどバラが咲く位置まで届いてよいバランスです。栽培の難易度
日当たりがよく、水はけのよい土壌に植えます。植えつけ時に元肥を施し、たっぷり水やりしたら、あとは雨まかせでかまいません。草丈が高くなる種類には、倒伏しないように支柱を立てておきます。花が咲き終わったら花穂を花茎の根元で切ると、側枝が伸びて二番花が咲きます。耐寒性は強いものの、耐暑性が弱いため、温暖地では二年草として扱われます。一年草は秋にタネまきして、翌年の春から初夏に花が咲きますが、二年草はタネまきしてから2年目に開花するタイプをいいます。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。