天野惠子先生のすこやか女性外来 第11回(02)脳卒中は、日本人が要介護になる原因の第2位、死因の第4位となる怖い病気です。女性の脳梗塞や脳出血は高齢で発症することが多く重症化しやすく、女性のくも膜下出血は男性より多いなど、さまざまな性差があることをご存じでしたか?生涯、脳の血管が健康であるために、今、知っておきたい大事なお話を伺いました。
前回の記事はこちら>> 起こすと危ない。脳梗塞、脳出血、くも膜下出血
天野惠子(あまの・けいこ)先生静風荘病院特別顧問、日本性差医学・医療学会理事、NPO法人性差医療情報ネットワーク理事長。1942年生まれ。1967年東京大学医学部卒業。専門は循環器内科。東京大学講師、東京水産大学(現・東京海洋大学)教授を経て、2002年千葉県立東金病院副院長兼千葉県衛生研究所所長。2009年より静風荘病院にて女性外来を開始。脳卒中の3タイプとは──血管が「詰まる」脳梗塞、血管が「破れる」脳出血と、くも膜下出血
「脳卒中」は1つの病気を指す名称ではなく脳の血管の障害によって生じる病気の総称で、3つのタイプがあります。
●脳の血管が詰まるか、破れるかで分かれる「脳卒中の3タイプ」脳の血管が詰まる「脳梗塞」(上図のようにさらに3つの種類に分かれる)、脳の中の細かい血管が破れて出血する「脳出血」、主に血管にできた瘤(脳動脈瘤)が破れて脳の表面近くに出血する「くも膜下出血」。
高齢化に伴って患者数も増えており、処置が遅れると重い後遺症を残したり場合によっては命にかかわることもある怖い病気です。
女性の脳卒中発症は70歳以降がピーク。そのため重症化しやすい
脳梗塞や脳出血の主な原因は動脈硬化や高血圧で、一般に女性より男性に多い病気です。発症年齢には性差があり、男性は50代から、女性は70代から増え始め、年齢が高くなるほど差は小さくなり、80代では女性が男性を上回るとのデータもあります。
●更年期以降、糖尿病、高血圧など生活習慣病がリスクに。女性の生涯における脳卒中の危険因子監修 日本脳卒中協会 平野照之(杏林大学)高齢での発症が多いことは、重症化しやすく発症後の死亡率も高いことを意味します。上図のように女性には生涯を通じてさまざまなリスクがあり、更年期以降は特に血糖値と血圧のコントロールが重要です。
将来の脳卒中予防は50歳での健康診断と生活習慣の改善から
脳梗塞の主な要因である動脈硬化は、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病によって進行します。
閉経前の女性は、女性ホルモン・エストロゲンの働きでこれらのリスクから守られていますが、更年期以降は自分自身の心がけで動脈硬化を防がなければなりません。
50歳の節目に健康診断を受けて体の状態を総チェックし、リスクに応じて食事や運動など生活習慣の改善にとりかかりましょう。これが将来の脳卒中予防のために今できる最善の方法です。
不整脈を感じたら受診を
心房細動が原因の脳梗塞が増えている
心原性脳塞栓症は、心臓の血管にできた血栓(血の塊)が血流に乗って脳に運ばれ、脳の血管を詰まらせる病気。女性に多く、最近増えている脳梗塞です。心臓の血栓は心房細動(心房の収縮が不規則になり細かく震える不整脈)で生じやすくなります。動悸や脈の乱れを感じたときは受診し、定期的に心電図などの検査を受けましょう。薬で血栓を予防することも可能です。
*NPO法人性差医療情報ネットワーク「女性外来マップ」では、女性外来を開設している医療機関(2018年現在約300か所)のリストを公開。
URL:
http://www.nahw.or.jp/hospital-info*「女性外来オンライン」(天野惠子先生主宰)では、天野先生ご自身が厳選した女性の健康の回復や維持に役立つ信頼性の高い情報を発信しています。
公式サイト「女性外来オンライン」:
https://joseigairai.online/YouTube
「女性外来オンラインチャンネル」はこちら>> イラスト/佐々木 公〈sunny side〉 取材・文/浅原須美
『家庭画報』2023年4月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。