観劇という非日常体験が母への何よりの親孝行に
歌舞伎やクラシックのコンサートには、お母さまと一緒に出かけることも。
「もともと私の祖父……母の父親は、新潟からわざわざ歌舞伎を観に東京に出かけるほど芝居好きだったようです。母が頻繁に歌舞伎に出かけるようになったのは、ここ20年でしょうか。姑を見送って自分の時間が持てるようになり、お友達に誘われて観劇するようになったのです」
市川猿之助さんのファンになったお母さまは、娘の美穂さんも驚くほど積極的に観劇を重ねるようになりました。
「漫画を原作にした“ワンピース歌舞伎”も楽しんでいましたし、猿之助さんが出演する歌舞伎以外のシェイクスピア劇など、いろいろなジャンルの舞台を観るようになりました。旅行を兼ねて地方公演にまで出かけたり、新しい若手役者さんの“推し”を見つけたり。猿之助さんをきっかけに、どんどん世界が広がっていますね。最近も“元気でいないと猿之助さんが観られないから”と散歩で足腰を鍛えていますから、“推し”の効果は絶大です」
幕間のお楽しみ。歌舞伎座名物の「めでたい焼」。300円/歌舞伎座サービス TEL:03-3545-6557母娘で観劇という同じ趣味を持ち、一緒に出かけたり話題にすることは、何よりの親孝行になる、と中井さん。
「お互いに年を取ってくると、どうしても地味な話題ばかりになりがちですが、お芝居やコンサートという非日常の華やかな時間を共有することで、会話も弾み、親子関係に潤いがもたらされているように感じます。劇場で並んで座って、何時間かを一緒に過ごすだけでも何だか嬉しい、豊かな気持ちになりますし。
私が“次は猿之助さん、こんな舞台に出演されるみたいよ”と知らせれば、母も“片岡仁左衛門さんは孝夫時代はああだった、こうだった”と私が知らない昔のことを教えてくれたりして、電話でも情報交換をしています。観劇って目からも耳からも刺激を受けて気持ちを上げることができるので、これからも誘い合って、一緒に劇場に出かけたいですね」