【天野惠子先生が推薦】全国・女性外来を訪ねて
JCHO久留米総合病院 女性総合診療科「なでしこ」 病院長 田中眞紀先生
●前回の記事
家族歴のある女性は特に気をつけたい「くも膜下出血」女性医療の充実が、診療科の枠を超えて波及
病院全体に行き渡る女性外来のマインド
田中眞紀先生(たなか・まき)1980年久留米大学医学部医学科卒業。1990年社会保険久留米第一病院(現JCHO久留米総合病院)乳腺外科へ。2002年女性総合診療科「なでしこ」開設、2005年女性病棟開設。2012年病院長に。福岡県医師会理事、久留米大学外科客員教授、日本リンパ浮腫治療学会理事、日本キャンサーアピアランスケア協会理事。「なでしこ」から広がる
女性が受診しやすい体制
JCHO(ジェイコー)久留米総合病院は昔から婦人科や乳腺外科にかかる女性患者の多い病院でした。
2000年代初頭、天野惠子先生が提唱した性差医療の重要性に病院幹部も同調。田中眞紀先生を中心に2002年、女性総合診療科「なでしこ」が開設されました。
抗がん剤治療中もリラックスできるよう配慮した明るい外来化学療法センター。それから約20年。同院の女性医療は独自の発展を遂げます。
現在「なでしこ」は内科と泌尿器科で担当。ほかでは対応しきれない女性特有の不定愁訴や更年期障害にじっくり向き合う本来の役割を担い、主に漢方治療を行います。
「なでしこ」と女性病棟の案内板。一方で、性差を考慮し女性が安心して受診できる体制をほかにも取り入れました。健康管理センターに乳がんや婦人科検診を行う「女性検診日」を設け、4階を女性専用病棟としたのも一例です。
乳がん体験者コーディネーターで美容ジャーナリストの山崎多賀子さんによるメイクアップ教室(乳がん市民公開講座)乳がんの患者用に寄贈された患者さん手作りのタオル帽子。田中先生が特に力を入れているのが乳がんのアピアランスケア(外見の変化に伴う苦痛を和らげるサポート)。
定期的に教室を開催して専門家によるメイク指導や頭髪ケア、補正下着の情報などを提供しています。
“女性外来”という言葉の要らない医療が理想
田中病院長のもと、病院の柱に位置づけられる女性医療の充実は、診療科の枠を超えて波及効果をもたらしました。
各科の看護師、技師、薬剤師たちも積極的に専門資格を取得。地域医療の要としての自覚が病院全体に浸透していることに田中先生は大きな誇りを持っています。
「傾聴と共感を基本に患者さんに安心と信頼を提供する女性外来の精神は、全医療に共通のもの。それが当たり前になり“女性外来”という言葉が必要なくなる――。これが私たちの目指す理想の医療です」(田中先生)