レディ・フィオーナが庭を復活
実はこの「アメリカン・ガーデン」は、長い間放置されたままに。
レディ・フィオーナが嫁いだ1999年当時は、往年の面影はありませんでした。イラクサやブラックベリーの藪がシャクナゲやツツジに覆いかぶさり、雑草の楽園と呼べるほど……。
2015年11月のある週末のことでした。レディ・フィオーナは熊手と鎌を持ち、意を決して「アメリカン・ガーデン」に乗り込みました。以来、週末ごとに数時間ずつ黙々と一人で雑草取りに励みました。やがて、2人の庭師も参戦し、3人で力を合わせて作業を続行。
ある日、ついに2代目伯爵の庭の原形が姿を現しました。瀕死寸前だったシャクナゲとツツジの潅木群は、再び陽を浴びるようになると、順調に息を吹き返していったのです。
レディ・フィオーナの愛情が注ぎ込まれたツツジとシャクナゲ。ところで、城を出て「ジャックダウ・カッスル」までゆるりと歩いていくと、色とりどりのシャクナゲとツツジの花々を愛でることができるアメリカン・ガーデンに着きます。
レディ・フィオーナもこの時期は毎朝、犬たちを引き連れて自転車でやって来ます。「2代目伯爵の思いを受け継いだシャクナゲの潅木が視界に入る度に、満ち足りた気持ちに包まれます」と彼女は語ります。
「古い歴史のある城に比べて、自分の人生は短い」と、爽やかに笑うレディ・フィオーナ。その勇気と愛情に、思わずエールを送りたくなるのです。
古い城の壁にクライミングローズ(つる薔薇)が美しく映えて。「
ハイクレア城に暮らす」第9回は、4月2日(月)配信予定。
●フィオーナ・カナーヴォン伯爵夫人/ロンドン生まれ。6人姉妹の長女。 セント・アンドリューズ大学で英語とドイツ語を専攻、ロンドンで国際会計士として働く。1999年カナーヴォン伯爵と結婚。一人息子エドワードの母。ハイクレアのガイドブックをはじめハイクレアに関する数々の著書を出版、歴史家として知られる。趣味は乗馬、読書。オフィシャル・サイトは
https://www.ladycarnarvon.com/ 山形優子フットマン/Yuko Yamagata-footman
フリーライター
上智大学文学部社会学科卒業。カルフォルニア州立大学心理学科でヒューマニスティック・サイコロジーを専攻、修士課程修了(ロータリー財団奨学生)。新聞記者を経てフリーライターに。在英約30年。イギリス人男性と結婚、3人の娘の母。著書に『憧れのイングリッシュガーデンの暮らし』(エディシォンドゥパリ)、『なんでもアリの国イギリス なんでもダメの国ニッポン』(講談社文庫)他。