2023年3月1日から東京の国立新美術館でスタートした「ルーヴル美術館展 愛を描く」。ルーヴル美術館に所蔵される膨大な作品の中から、16世紀から19世紀半ばまでに描かれた、愛をテーマにした73点の絵画が出展されています。パリ在住の美術展プロデューサー・今津京子さんに、知られざる愛の名画の秘密を教えていただきましょう。
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ウスターシュ・ル・シュウール《キリストの十字架降下》
ウスターシュ・ル・シュウール《キリストの十字架降下》1651年頃 油彩/カンヴァス Photo (c) RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / Gérard Blot / distributed by AMF-DNPartcom神は、人類を救うために我が子キリストが十字架にかけられて死を遂げるという究極の犠牲を受け入れました。その意味で磔刑のテーマは、人間に対する神の愛とみなすことができます。
この作品では十字架から下ろされたキリストの足元にマグダラのマリアが口づけし、画面右では青い衣服をまとった聖母マリアが両手を広げて嘆いています。フランス側監修者のルーヴル美術館ソフィー・キャロン学芸員は、登場人物の整然とした配置、青と茶の色の対比が素晴らしいと説明してくれました。17世紀フランスの古典主義絵画の王道と言える作品と私は捉えています。
会場では作品の額にもご注目ください。額もまた美術工芸品です。日本までの輸送に耐えられないものもあり、展覧会を開く際に旅行用の簡素な額に入れ替えることもしばしばありますが、この作品は丸い画面を際立たせる立派な金箔の額に入ったまま送られてきました。
『ルーヴル美術館展 愛を描く』
写真提供/日本テレビ放送網西洋社会における様々な愛の概念が絵画芸術にどのように描出されてきたのか、ルーヴル美術館の膨大なコレクションから精選された73点の絵画を通して浮き彫りする。16世紀から19世紀半ばまで、ヨーロッパ各国の画家による作品から愛の表現の諸相を紐解く、かつてない趣向の展覧会。
東京展:国立新美術館 企画展示室1E(東京・六本木)会期:~2023年6月12日(月)
開館時間:10時~18時(金・土曜日は20時まで。入場は閉館の30分前まで)
観覧料:一般2100円/大学生1400円/高校生1000円
休館日:火曜(5月2日は開館)
お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
公式サイト:
https://www.ntv.co.jp/love_louvre/京都展:京都市京セラ美術館2023年6月27日(火)~9月24日(日)
※詳しい入館方法や最新情報は展覧会公式サイトでお確かめください。
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今津京子/Kyoko Imazu
撮影/小野裕次美術展プロデューサー。パリをベースに、今回の「ルーヴル美術館展 愛を描く」、「ガブリエル・シャネル展 Manifeste de Mode」(2022年)、「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」(2020年)、「モネ展」(2015年)など、40年にわたり数十を超える大型展覧会の企画に携わる。
日仏英の3か国語を操り、美術、ファッションなどの分野でジャーナリストとしても活動。音楽、演劇、料理、アンティークなどアール・ド・ヴィーヴルをこよなく愛する。
表示価格はすべて税込みです。