福之助を襲名した僕にとって2019年に(市川)猿之助お兄さんからスーパー歌舞伎Ⅱ『新版オグリ』にお声がけいただいたことは大きな転機となりました。
襲名後あまりお役のつかない時期が続き、父(中村芝翫)からは「今までに出たことがない座組に出て、刺激を受けることも大切」と背中を押されました。
実際に『新版オグリ』はとてもやりやすい環境で、自主性を大切にされている猿之助お兄さんのご指導は今までにない経験でした。
「稽古の期間中はあなたがやりたいことをやって、それが違っていたら違うというよ。まずは何かを出してくれないと始まらない」といってくださり、とても濃い時間を過ごすことができました。
『新・三国志』の孫権。2022年3月、歌舞伎座。©松竹その後、コロナ禍になったときには(坂東)玉三郎のおじさまに稽古をしていただきました。歌舞伎の稽古が楽しいと思えたのは、このときが初めてでした。
玉三郎のおじさまは、結果に至るプロセスを言葉にしてくださるので、“データ分析好き”の僕にはとても理解しやすかったんです。
この役を演りたいなら、そこから逆算して、どういう声の出し方でどこの音域を広げるべきなのか。さらに舞台に向けた準備についても教わりました。
そして2023年4月は『新・陰陽師』に出演させていただきます。今回は猿之助お兄さんの古典で若手を育てようというお考えなのか、前回と同じ原作ですが古典の手法で上演されます。
2013年とは全く違う演出で拵(こしら)えも違うので見比べて楽しんでいただけると思います。
中村福之助
1997年東京都生まれ。父は8代目中村芝翫。2000年9月歌舞伎座『京鹿子娘道成寺』の所化と『菊晴勢若駒』の春駒の童役で初代中村宗生を名乗り、初舞台。2016年10、11月歌舞伎座『極付幡随長兵衛』の雷重五郎、『熊谷陣屋』の伊勢三郎、『祝勢揃壽連獅子』の狂言師後に仔獅子の精、『芝翫奴』の奴駒平で3代目中村福之助を襲名。2022年は3月歌舞伎座『新・三国志』の孫権、6月歌舞伎座『ふるあめりかに袖はぬらさじ』の通辞藤吉、8月歌舞伎座『新選組』の鎌切大作などで活躍し、その頭角を現した。
今月の歌舞伎
【明治座】
明治座創業百五十周年記念
壽祝桜四月大歌舞伎
明治座の創業150周年を記念して昼夜二部制で行われる公演。出演は中村梅玉、中村又五郎、中村芝翫、片岡孝太郎、松本幸四郎、片岡愛之助ほか。
~2023年4月25日
●昼の部 11時開演
一、『義経千本桜 鳥居前』 二、『大杯觴酒戦強者』 三、『お祭り』
●夜の部 16時開演
通し狂言『絵本合法衢 立場の太平次』
1等席1万5000円ほか
明治座チケットセンター:03(3666)6666(10時~17時)
【歌舞伎座】
歌舞伎座新開場十周年記念
鳳凰祭四月大歌舞伎
~2023年4月27日
●昼の部 11時開演
『新・陰陽師 滝夜叉姫』
●夜の部 16時開演
一、『与話情浮名横櫛』 二、『連獅子』
※中村福之助さんは昼の部『新・陰陽師 滝夜叉姫』の俵藤太役で出演します。
1等席1万8000円ほか
チケットホン松竹:0570-000-489
表示価格はすべて税込みです。 ※「与話情浮名横櫛」の「櫛」は、お使いの端末や環境によって字形が異なる場合があります。
撮影/岡積千可 構成・文/山下シオン ヘア&メイク/伊藤宏泰
『家庭画報』2023年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。