365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> バラ〜その2 イングリッシュローズ10選
1994年に作出された‘モリニュー’はソフトなオレンジ色でロゼット咲きの花形がとてもきれい。何度も返り咲きするので、長く楽しめます。耐病性に優れ、とても強健な性質なので、初心者でも栽培できます。じつはその性質こそ、オースチン氏が新品種の作出にかけた願いだったそうで、試験場で耐病性を検証し、どんなに美しく咲いても丈夫な性質でないとデビューは見送られるそう。■属科・タイプ:バラ科の落葉低木
■花期:5月中旬〜6月中旬(初夏咲きの見頃の時期)
美しく香りのよい四季咲き性のバラは世界中で愛されています
2018年にイギリスのバラ育種家、デビッド・C.H.オースチン氏が逝去されたとき、あらためて偉大な功績を振り返り、日本にこれほどまでバラ愛好家がいるのは彼のお陰だと感じました。
日本のローズガーデンで、また個人のお宅で咲いているバラに、オースチン氏が世に出したイングリッシュローズをどれほどたくさん見かけることか…。
1950年代はモダンローズの全盛期でしたが、そんな中、オールドローズのもつ自然な優雅さや香りを残しつつ、ハイブリッドティの四季咲き性や耐病性を兼ね備えたバラができないものかと育種に情熱を注いでいたのがイギリスの育種家、オースチン氏です。
そして1960年に美しいピンクのバラ‘コンスタンス スプライ’が発表され、ここからイングリッシュローズの歴史が始まりました。以後、「デビッド・オースチン・ロージス」では毎年2〜3品種の新作を発表し、今では約200品種という充実したラインナップとなっています。
魅惑的なピンクの‘メアリーローズ’。このバラのいちばんの魅力は香りのよさです。ハチミツとアーモンドの香りが少し混じる、オールドローズ特有の芳香をもちます。丈夫な性質で何度も返り咲きします。1983年作出ですが、今でも人気が高い品種です。オールドローズならではのすばらしい芳香をもちつつ、四季咲き性で栽培しやすいのがイングリッシュローズです。バラ愛好家にとってはまさに究極のバラ。
このバラの登場以降、バラを育てて咲かせる方々が格段に増えたと思います。その意味でも、デビッド・オースチン氏の園芸の世界への貢献は多大なものがあると感じます。
イングリッシュローズにもたくさんの銘花がありますが、下のMEMOでは、私が実際に見てこれは素敵だと感じた品種を10種ピックアップしました。散歩道でも咲いている可能性があるので、ぜひ探してみてください。
栽培の難易度
今回は新苗の植えつけのポイントを紹介します。日当たり・風通しともによく、水はけのよい土壌に植えます。植えつけ前に元肥を施します。新苗は成長期の苗なので、根を傷めないためにできるだけ根鉢を崩さずに植えつけます。その際に支柱を立て、伸びている枝を固定します。たっぷり水やりし、その後も土壌が乾いたタイミングで水やりします。根がしっかり活着してからは、水やりは雨まかせでかまいません。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。