365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> バラ〜その3 フレンチローズ10選
1998年にメイアンが作出した‘ジャルダン ドゥ フランス’。輝くようなサーモンピンクが美しく、10輪以上が花房になるのでパッと目を引きます。フランスの庭という品種名にふさわしく、気品ある華やかさを感じさせるバラです。■属科・タイプ:バラ科の落葉低木
■花期:5月中旬〜6月中旬(初夏咲きの見頃の時期)
フランス生まれのバラは華やかで、絵画的な美しさがあります
バラの育種で世界をリードするのは、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカです。各国に有名なバラの育種専門のナーセリー(種苗会社)がありますが、そこから生まれる品種には、どこかお国柄が表れてとてもおもしろいと感じます。
今回はフランスのナーセリーが生み出すフレンチローズを紹介します。優雅で華やかな中にもどこかアンティークな雰囲気も感じられるバラは、イギリスの整った花形のバラとはまた違う美しさで、風情を感じさせてくれます。
まずはフランスのバラ専門ナーセリーの中でも長い歴史を誇るメイアンから。世界39カ国からなる「世界バラ会連合」が3年に一度開催するバラ会議において殿堂入りのバラを選定していますが、1976年に開催された3回目の会議で初めて殿堂入りを果たしたのが、メイアンが1945年に作出した‘ピース’です。
以来、‘パパメイアン’、‘パスカリ’、‘ポニカ’82’、‘ピエール ド ロンサール’、‘カクテル’、‘ノックアウト’とメイアンの7品種が殿堂入りを果たしています。現在までに殿堂入りしたのはたったの18種ですから、メイアンのバラがいかに優れ、評価が高いかがわかります。
新奇性を求める一方で、世界中の愛好家に愛されている‘ピエール ド ロンサール’や‘イヴ ピアジェ’など、うっとりするようなロマンチックなバラを生み出すのが、メイアンの魅力だと思います。
デルバールといえば、世界的な画家の名を抱くペインターシリーズがよく知られています。これは2003年作出の‘エドガー ドガ’。白地にピンクの絞り柄が個性的で、セミダブルの波打つ花弁が印象派の画家、エドガー・ドガが描いた踊り子を連想させます。2つめに紹介するのは、フランス中部にあるデルバール。デルバールといえば、花色に絞りが入る個性的な品種が有名です。
‘エドゥアールド マネ’、‘モーリス ユトリロ’、‘ポール セザンヌ’など偉大なるアーティストの名前を抱く個性的なバラを見かけたら、デルバールの品種だと思ってください。多くのエレガントなバラの中で異彩を放つ個性的な品種を生み出す育種技術はすばらしいと思います。
3つめはリヨンの名門ナーセリーのギヨー。ここが生み出すバラもかなり個性的で、さまざまな色が混じりあうため、ひと言で何色と言い表せない花色の品種が多くあります。
‘ソニア リキエル’、‘ポール ボギューズ’など各界の著名人の名前がつけられた品種も多くあり、花を見ながら花名の人物に思いを馳せるのも楽しみの一つです。
下のMEMOでは3社のバラの中から、私が出会って魅力的だと感じた10品種をピックアップしました。華やかなフレンチローズの世界をご堪能ください。
栽培の難易度
今回は植えつけ後から開花が終わる時期の管理ポイントを紹介します。バラは肥料が足りなくなると葉が全体的に黄色っぽくなって生育が衰えます。開花時期の間は6月上旬に一度緩効性肥料をまきます。返り咲きする品種や秋に再び咲く品種もあるので、8月下旬〜9月上旬にもう一度追肥をします。株を充実させるためには1年目にたくさん花を咲かせないことも大切です。9月中旬までは蕾を繰り返し摘み取り、太くて長い枝が伸びてきたら、早めに枝先をカットします。なお、つるバラは植えて1年めは花があまり咲かないので、枝先をカットする必要はありません。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。