365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> アリウム・ギガンチウム
無数にも思える小さな花が10〜15cmのボール状の花房に。アリウム・ギガンチウムの個性的なフォルム(形状)とボリューム感は、一度見たら忘れられないほどのインパクトがあります。■属科・タイプ:ネギ科の秋植え球根
■花期:5月〜6月
■草丈:100〜150cm
見ているだけで心が弾む大きなボール状の花
アリウムには多くの種類がありますが、なかでも大型種を代表するギガンチウムはよく知られた存在です。初夏のイギリスで、直径10cm以上あるボール状の花房が立ち並んで咲くシーンを初めて見たとき、この花はただ美しいだけでなく、こんなにもダイナミックでインパクトのある景色を生み出すことができるのだと感激しました。
涼しげな淡いブルーの花房がポンポンと並ぶリズミカルな様子に心が躍り、見ているだけで楽しい気分に。立ち位置を少し変えると、花房の並びが変わって見えるのもおもしろく、何回もシャッターを切って撮影しました。
現在では日本でもイングリッシュガーデン風の観光ガーデンなどで、ギガンチウムを上手に利用した景色が作られるようになり、毎年、開花の時期を楽しみにしています。
また、ほかの大型種も出回るようになり、ギガンチウムより青みの濃い‘パープルカイラ’や、花房は大きいものの草丈がギガンチウムより低い‘パープルセンセーション’など、植えたい場所に合わせてセレクトできるようになっています。
観光ガーデンでアリウム・ギガンチウムが咲く魅力的な景色に出会いました。正面から見ると横一列に並べて植えられているのですが、横から見ると、大小の花房がまとまって見えて。いろいろな立ち位置から写真を撮るのも楽しい!さて、草丈のある大型種以外のアリウムも個性的でおもしろいのでご紹介しておきます。まずは草丈が40cm程度ながら、10cmくらいのボール状の花房をつけるクリストフィ。針のように細い花弁が特長で、花色がどこかメタリックな雰囲気なのもとても素敵です。また、草丈が30〜50cmで、長い花軸の先端に小さな花をつけるため、花火のような形になるシューベルティも魅力的です。
どちらもイングリッシュガーデンでよく利用されますが、とくに魅力的なのが花後の形状で、それも計算に入れてデザインされた植栽を見たとき、さすがにイギリスの庭づくりだと感心しました。ギガンチウムもボール状の花房がそのまま残るので、最近では日本の観光ガーデンでも秋まで花房を残し、枯れ姿を楽しめるようにしているところも見かけるようになりました。
小型種にも魅力的な品種が出回るようになり、切り花でも人気の‘丹頂’や、白い花弁の中心がローズピンクに染まる‘シルバースプリング’などは個人邸の庭でもよく利用されています。いずれも、すらっと伸びる長い茎が特徴ですが、支柱をしなくても自立し、景色のアクセントとなってくれます。これから6月にかけて、いろいろな種類のアリウムが咲くので、散歩道でもそのフォトジェニックな花を探してみてください。
栽培の難易度
球根が大きく、まだ暑さが残る時期に植えると土中で傷んでしまうことがあるので、気温が下がり始める10月が植えつけ適期で、霜が降りる前に植えつけておきます。日当たりがよく、水はけのよい土壌を好みます。植えつけ時に元肥を施し、大型種は球根2〜3球分、小型種は球根2球分の深さに植えつけます。植えつけ直後にたっぷり水やりをし、その後は土壌がからからに乾いたら水やりします。花が終わったあともそのまま切らずに残しておくと、個性的な枯れ姿が楽しめます。葉は自然に枯れるまでそのままにしておきます。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。