365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> ヤマボウシ
花弁に見えるのは総苞片。1枚の先端がすっと尖っているのが特徴で、ハナミズキは丸みのある形をしています。■属科・タイプ:ミズキ科の落葉高木(常緑種もあり)
■花期:5月〜6月
開花と葉の展開が同時。白×緑の樹姿に心が洗われます
4月中旬にはハナミズキが咲き、それが終わるとヤマボウシ、と、散歩をしながら開花を楽しみにしていますが、このところ、どちらも年々開花が早まっている気がします。
今年は3月下旬にハナミズキが咲き始めているのを見てびっくりしました。ハナミズキと同時期に咲く黄モッコウバラも3月下旬に開花していて、こんなに早く開花しているのを見たのは初めてです。ソメイヨシノも早かったし、温暖化の影響ともいわれていますが、さまざまな花木が変わっていく気象状況に敏感に反応しているようです。
さて、私はヤマボウシがとても好きで、丸みのある明るい緑色の葉の上に、4枚の白い花弁(総苞片)を風車のように広げる姿を見ると、いつもすがすがしい気持ちになります。
開花時期が早く、花が先に咲いて葉があとから展開するのがハナミズキ。開花時期が遅く、葉が先に展開して花があとから咲くのがヤマボウシ。これまではそう区別していましたが、この2〜3年、開花と同時に葉も展開しているハナミズキを見つけ、「あれれ? これはどういうこと」と疑問を感じています。同様に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。これも温暖化の影響でしょうか?
6月上旬、長野県の観光ガーデンで美しいヤマボウシに出会いました。自然に整う樹形もきれいで、緑の中で白さが際立っていました。ヤマボウシは中国、朝鮮半島、そして日本に自生し、一般的な種類は落葉高木です。白い花が木を埋め尽くすように咲く姿がとても魅力的ですが、花後にはかわいらしい実がなり、秋には美しく紅葉もします。観賞価値が高いこの木は、江戸時代に欧米に渡り、海外でも非常に人気があります。
私がよく散歩をする住宅街では、ヤマボウシをシンボルツリーにしているお宅が多くあり、毎年、花の時期に見てまわるのを楽しみにしています。人気の高いピンク花のヤマボウシを植えているお宅もあり、これは本当にかわいらしくて毎年必ず写真を撮ります。
また、なかに秋になっても紅葉せず、冬の間も葉をつけたままのヤマボウシがあるのですが、これは常緑タイプのガビサンヤマボウシやヒマラヤヤマボウシなどです。多くの木々が葉を落とす冬に、元気に葉を茂らせているのを目にすると、常緑タイプも魅力的だと感じます。
同属のハナミズキが歌になるほど知られているのに対し、昔から日本に自生しているヤマボウシはあまり注目されないことを少し残念に思うのですが、個人邸でも大活躍している木なので、ぜひ花の時期の美しい樹姿を散歩道で探してみてください。
栽培の難易度
日当たりがよく、肥沃で水はけのよい土壌に植えます。植えつけ時に元肥を施し、たっぷりと水やりします。その後は雨まかせでかまいません。自然にきれいな樹形に育つので、強い剪定は必要なく、落葉期に長く伸びすぎた枝や枯れ枝を切り落とす程度でかまいません。年に一度、2月〜3月に追肥をすると花つきがよくなります。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。