バラの育種に情熱を注ぎ「ミスターローズ」と呼ばれた、鈴木省三氏をご存じですか？

バラ〜その4　日本生まれのバラ10選

1985年、鈴木省三氏作出の‘春風’。観光ガーデンでパーゴラの支柱に絡まり咲いていましたが、その艶やかなピンクは遠目にもよく目立ちました。近づくと花弁の裏側が黄色でびっくり！　ガーデナーさんが、枝が柔軟でトゲがないので誘引するときも扱いやすいと話していました。耐寒性が強い性質です。

■属科・タイプ：バラ科の落葉低木
■花期：5月中旬〜6月中旬（初夏咲きの見頃の時期）

美しいだけでなく、日本の環境に適したバラがたくさんあります

イギリス人のガーデナーさんに日本人は本当にバラが好きだね、と言われたことがあります。日本には各地にバラを集めたガーデンがあり、その数はイギリスよりずっと多いそうです。

この時期に住宅街を歩くと、バラを植えているお宅が何軒もあり、しかも、みなさん上手に管理してきれいに咲かせている、と驚いていました。

バラは北半球にのみ自生し、およそ150種の自生種があるといわれています。そのうちノイバラやハマナスをはじめ20種が日本にある、というのも考えてみればすごいことで、万葉集に登場するほど古い時代から親しまれてきた花だとわかります。その中でもノイバラは房咲きのバラの、また、テリハノイバラはランブラー系のつるバラの親となり、多くの品種が誕生しています。

バラの育種に関しては欧米にリードされたものの、昭和以降には日本でも多くの優れた新品種が誕生しています。そこにはバラの育種に情熱を注いだ多くの育種家の努力がありますが、その代表ともいえる一人、鈴木省三氏には個人的にとても感謝をしています。

鈴木氏といえば、千葉県にある京成バラ園で初代の研究所所長を務めた方で、「ミスターローズ」として世界的にも知られる育種家です。

鈴木氏は東京都立園芸高校を卒業され、京成バラ園に入る以前は高校に近い場所に育種の拠点をおいていました。その縁から都立園芸高校に鈴木省三記念バラ園が誕生したのが1990年のことです。

鈴木氏が寄贈した貴重な原種、原種交配種、オールドローズ、モダンローズが植えられ、バラの品種改良の歴史がわかりやすく示されています。近くに住んでいることから、公開日に訪ねては、鈴木氏の生み出した品種などもじっくり見ることができ、日本のバラの育種について勉強させてもらいました。

バラの美しさの歴史を学ぶためのバラ園、それは、ここで学ぶ若者の中から、いつかバラの育種を手がける人が出てきて欲しい、という鈴木氏の願いが込められたバラ園でもあると感じました。

さて、ローズガーデンを訪ね、日本生まれのバラを見つけるのはとても簡単です。漢字か平仮名で品種名が記されていれば、日本生まれの可能性が高いからです。

親切なガーデンでは作出国もラベルに書いてくれているので、日本生まれのバラを探すことをテーマにガーデンめぐりをするのもおすすめです。

下のMEMOでは、私がローズガーデンで出会った魅力的な10品種の日本生まれのバラを紹介します。


2013年に京成バラ園芸が作出した‘つるローズうらら’。人気品種の‘ローズうらら’の枝変わり品種です。丸弁の平咲きの花形が愛らしく、日本生まれのバラにもこんなに魅力的なつるバラがあることを認識させられた品種です。耐陰性が高いという性質も魅力だと思います。

栽培の難易度

今回は秋〜冬にかけての管理ポイントを紹介します。秋の花が咲き終わったら、株を充実させるために、花がらを摘み取り、葉を多く残します。剪定・誘引は、つるバラは12月〜翌年1月に、四季咲き性のバラは1月中旬〜2月中旬に行います。つるバラは初夏の開花後に伸びる新しい枝を残すのが基本。四季咲きのシュラブローズは、剪定を繰り返し行うことで力強い株に育ちます。枯れ枝や細くて短い枝を取り除き、全体を半分くらいの樹高に切り戻します。12月〜翌年1月の間に緩効性肥料を1回施します。

【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる