鎌倉「オルトレヴィーノ」で、トスカーナの豊かな食卓を

円熟期を迎えたシェフが挑む“マイ スタイル”

イタリアで日本で。数々の経験を重ね、まさに円熟期を迎えた料理人たちが、まるで自宅のダイニングにゲストを招くような温かさで、唯一無二の料理、もてなしに挑んでいます。さらなる期待のかかる3名のシェフを訪ねました。

・ヴェンティノーヴェ（群馬・川場村）竹内悠介さん・舞さん

・ピアット ミツ（東京・麻布十番）岡村光晃さん


・オルトレヴィーノ（神奈川・鎌倉市）古澤一記さん・千恵さん　※この記事

自家製手打ちパスタを、卵黄を加えたアマトリチャーナ風のトマトソースであえた「ブッテラ風パッケリ」。

トスカーナの豊かな食卓の伝道師として

オルトレヴィーノ（神奈川・鎌倉市）
古澤一記さん・千恵さん

「イタリアに行ったら、料理人としての修業はもちろんのことトスカーナの田舎に暮らすこと、ワイン造りに携わること、ソムリエとして働くことを実現しようと心に誓っていました」と語る古澤一記さん。

奥さまの千恵さんとともにフィレンツェに移り、実際に住んでみると、イタリアの豊かな暮らしに魅了されたといいます。

春を告げる白アスパラに白トリュフの香りをまとった卵黄をからめて。

「近所のお肉屋さんもパン屋さんもごく普通のお店なのに、毎日食べても飽きない、毎日新しい気持ちで美味しいと感じられるのがすごいな、と。私たちが感じたイタリアの魅力を伝えたいと思っています」と千恵さん。

2010年に一記さんの故郷である鎌倉で、ワインとイタリアのお総菜のテイクアウトも提供するレストラン「オルトレヴィーノ」をオープン。11年ほど経過した頃、夫妻の思いを理解するお客さまも増えたことで、お総菜販売はいったん終了。

さらに2022年には8席ほどのレストランと千恵さんがコーディネートするアンティークのショップというスタイルに変えました。

非日常的な豊かさとしての外食ではなく、日常の豊かさを提案する最初の一歩がお惣菜、そこからステップアップしてのリスタイリングです。

柔らかくジューシーな仔羊肉をソテー、黒オリーブのペーストを塗り、ピスタチオのパウダーをまぶして、シナモンの葉、ローズマリー、セージ、タイムとともにロースト。シチリアの伝統的な煮込み料理カポナータをイメージした自家製ペースト、つぶした黒胡椒をつけながらいただく。付け合わせのじゃがいものホクホクとした食感と甘みもまた魅力的なひと皿。

上質なトスカーナ産のオリーブオイルと味わう、ぷるぷるのパンナコッタ。

「食事をゆっくり楽しんで、そのあとにアンティークやワイン、オリーブオイルを買ったり。美味しくて、幸せな時間を過ごしてもらえたら嬉しいですね」。

丁寧に織られた温かな布に包まれたような気持ちになれる、小さなイタリアがここにあります。



古澤一記さん（ふるさわ・かずき）さん＆千恵（ちえ）さん
2000年渡伊、一記さんは料理人として研鑽、3つ星「エノテカ・ピンキオーリ」ではソムリエを務め、千恵夫人はアンティークコーディネーターとして活動。東京オリンピック2020では、イタリアのセーリングチームのケータリングを担当。

オルトレヴィーノ
神奈川県鎌倉市長谷2-5-40
TEL：0467（33）4872
営業時間：12時〜21時30分（ランチは12時一斉スタート、ディナーは16時〜18時入店）
水曜・木曜定休
ランチコース5280円、ディナーコース1万1000円　ランチ・ディナーともにアラカルトあり　要予約