“自分らしく長生き”を叶えるために
今から始める認知症対策。恐れるより、まず知ることから
天野惠子(あまの・けいこ)先生静風荘病院特別顧問、日本性差医学・医療学会理事、NPO法人性差医療情報ネットワーク理事長。1942年生まれ。1967年東京大学医学部卒業。専門は循環器内科。東京大学講師、東京水産大学(現・東京海洋大学)教授を経て、2002年千葉県立東金病院副院長兼千葉県衛生研究所所長。2009年より静風荘病院にて女性外来を開始。症状を正しく理解することが大事。
起こらない人も多い妄想、徘徊、人格の変化など
認知症の症状には、ほぼすべての人に起こる「中核症状」と、人によって現れ方が異なる「行動・心理症状」があります。
ほぼ全員に起こる「中核症状」と、現れ方が異なる「行動・心理症状」がある
●認知症の主な症状*せん妄=落ち着きなく家の中をうろうろする、独り言をつぶやくなど。 *実行機能障害=計画や段取りをたてて行動できない。 *見当識障害=時間や場所、人との関係がわからなくなる。 全国国民健康保険診療施設協議会「認知症サポーター活動ハンドブック」を参考に作成同じことを何度も聞く、数分前の出来事を忘れる、日付や曜日がわからなくなるなどは、典型的な「中核症状」。
一方、徘徊や、穏やかだった人が怒りっぽくなる、物を盗まれたと思い込む、抑うつなどは「行動・心理症状」で、誰にでも起こるわけではなく、程度にも個人差があります。
認知症にも性差がある。
血管性は男性に多くアルツハイマー型は女性に多い
認知症患者は男性より女性に多く、特にアルツハイマー型認知症でその差が明らかです。理由は定かではありませんが、女性のほうが高齢者人口が多く平均寿命が長いという背景を統計学的に除いても、女性に発症しやすいという報告が出ています。
また症状にも性差があり、男性は感情をコントロールできないために暴力をふるう行為、女性は物を盗まれたと思い込むなどの妄想が現れやすい傾向があるといわれています。
メニューを思い出せなくても、食事をしたこと自体を覚えていれば認知症の心配はありません。更年期の記憶力低下の原因はエストロゲン分泌の減少
時期が過ぎれば自然に治まる
女性には記憶力・判断力が急激に落ちる時期が2回あります。認知機能が低下する更年期と認知症を発症する老年期です。
前者はエストロゲンの急激な減少というホルモンバランスの乱れが原因です(エストロゲンには記憶を司る神経伝達物質の分泌を増やす、脳の血流を促す、神経細胞を保護する、血管性認知症の原因となる動脈硬化を防ぐなどの働きがある)。
多くの場合、更年期を過ぎてホルモンの乱れがなくなると自然に治ります。
物忘れの自覚があれば大丈夫
●更年期の認知機能低下と認知症の違い予防効果は定かではない
ホルモン補充療法と認知症
エストロゲンには認知機能の低下を防ぐさまざまな働きがあることから、ホルモン補充療法に認知症予防効果があるかどうかの研究調査が行われてきました。
その結果、閉経直後に開始すればリスクは低下する、高齢になってからの投与は逆にリスクを上げる、治療期間によっても差が出る、などの報告が出ており、見解は定まっていません。
*NPO法人性差医療情報ネットワーク「女性外来マップ」では、女性外来を開設している医療機関(2018年現在約300か所)のリストを公開。
URL:
http://www.nahw.or.jp/hospital-info*「女性外来オンライン」(天野惠子先生主宰)では、天野先生ご自身が厳選した女性の健康の回復や維持に役立つ信頼性の高い情報を発信しています。
公式サイト「女性外来オンライン」:
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