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がんになった医療者の治療選択と向き合い方。診療放射線技師 林 祐樹さん 第1回(後編)

2018.03.09

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肩関節の温存のため、手術と放射線療法を併用


林さんの手術では、肩関節を温存するために、上腕骨の正常な部分を腫瘍を含めて切除し、その摘出した骨全体に放射線を一度に50グレイ照射して、その骨を再び肩関節に戻すという方法が取られました。放射線を当てた骨の細胞はいったん死滅しますが、自分の生きている骨の細胞と結合させると、骨の中に血管や神経が通り、骨が蘇る可能性があるからです。

家口さんが執刀した大手術を待つ間、精治郎さんと朝恵さんは何度もナースステーションに様子を尋ねました。不安や疲れがピークに達した頃、病室に駆け込んできた若い医師が「ご安心ください、腫瘍は完全に取れました!」と伝えてくれたときのことを忘れられないといいます。「医療に“完璧”がないのはわかっていますが、それでもほんとうにうれしかった」(精治郎さん)。

入院から約10か月後、さまざまな検査で全身の骨のどこにも腫瘍がないことが確認され、林さんは退院。久しぶりに家に帰り、駆けつけてくれた友達や親戚とともにお祝いをしました。


ところが、日常を取り戻しつつあった3か月後の12月、退院後の最初の診察に行き、再び検査を受けたところ、左大腿骨に小さな骨肉腫が見つかりました。家口さんにとっても予想外で、「骨肉腫で心配される肺などへの転移はなく、林さんの骨肉腫は離れた部位にほぼ同時にがんができる多中心性発生という珍しいタイプだと考えられました」と説明します。

いずれにしてもまた長く入院して抗がん剤治療と手術を受けなければならない……。林さんも両親も気持ちがどん底に沈みました。「あのつらい治療は何だったのか」という思いで、林さんは帰りの車の中でずっと泣いていました。食欲がないと2階に上がったままの林さんに両親もうまく言葉をかけることができませんでした。

そして、2〜3時間が経った後、泣き疲れた林さんは気持ちを切り換え、両親に「おなかがすいた。鍋作ってや」と明るく話しました。「その声に救われました。急いでいつもの鍋を作りながら、祐樹が親を気遣ってくれていることを感じていました」と精治郎さん。

こうして、林さんは翌年の年始から家口さんの異動先の大阪市立大学医学部附属病院で2度目の骨肉腫の治療に臨みます。
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