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【松岡修造の健康画報】幸せな最期とはどういうものでしょうか?緩和ケア医 山崎章郎先生に聞く

2023.05.19

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「ステージ4は私の宿命。自分がやるべきことに気づけました」──山崎先生


「幸せと思えるかどうかは周囲の人との関係性で決まるのですね」──松岡さん


山崎先生と松岡さん

山崎先生の案内で、ケアタウン小平の施設を見学。デイサービスセンターを訪問した際は、松岡さんのイメージに合わせてはちまきを巻いた利用者やスタッフに熱烈歓迎された。 (松岡さん)スーツ、シャツ、チーフ、ベルト、靴/紳士服コナカ

生涯のテーマは尊厳ある生と死



山崎 長く緩和ケアの仕事をしてきていえるのは、患者さんたちの肉体的苦痛を緩和することは可能だということです。問題は、痛みが取れた後に直面する人としての苦悩とどう向き合っていくか。「患者さんが最期まで一人の人間として尊厳を持って生きられること」がずっと私のテーマです。

私が桜町病院のホスピスで仕事をしていたときに出会った50代の女性の患者さんは乳がんでした。手術がいやで放置して、もうどうにもならない段階になって我々のホスピスの外来に来られ、背骨に転移したのを機に入院されました。とても読書好きなかたで、ボランティアの人たちが近くの図書館で借りてきてくれた本をいつもベッドで読まれていたのですが、やがて体力が落ちて本を持つことができなくなったとき、ボランティアの人たちは1ページずつコピーして読めるようにしたんですね。

そのコピーすら持てなくなり、あと2~3週間かな......と私が考えていたとき、不意にその患者さんが「先生、私まだ死にたくありません」といったんです。「私のために本のコピーまでしてくれる人たちと、もう少し一緒にいたい」。死ぬことがわかっていながら手術を拒否し、がんを放置してきたかたでしたが、最期に近づいた段階で生きる意味を見つけたんですね。

こんなふうに「この人たちとだったら生きている意味がある」と感じられるような関係性をつくること。それこそが、患者さんの尊厳ある生と死につながるいちばん大切な取り組みだと私は考えています。これは医療関係者だけでなく、家族や友人との関係性においてもいえることですね。
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