診断や治療選択に欠かせない検査の重要性を理解する
小林 望先生(こばやし・のぞむ)国立がん研究センター 中央病院 検診センター センター長。三重大学医学部卒業。国立がんセンター中央病院内視鏡部、栃木県立がんセンター画像診断部、消化器内科科長・内視鏡センター長を経て、2021年より現職。国立がん研究センターがん対策研究所検診開発研究部部長を兼務。病期を決めるため画像検査でがんの広がりを調べる
がんであることが確定したら病期を決めるための検査に進みます。がんの治療はがんの種類ごとに治療法がおおよそ標準化されており、治療を選択するうえで病期は重要な目安になるからです。
がんの広がりを調べることで病期が決まるため、がんが発生している臓器のまわりのリンパ節や遠く離れている臓器(脳、肺、肝臓、骨など)にがんが転移しているかどうかを画像検査(CT検査、MRI検査、必要に応じてPET検査)で確認します。
「病期はリンパ節転移や遠隔転移の有無によって変わってきます。そのため、検査の結果が出るたびに一喜一憂せず、最終的な診断結果を待って自分のがんの状態をきちんと把握することが大切です。そして、担当医の説明に疑問があれば質問し、それでも診断結果に納得がいかないときはほかの専門医の意見を聞くセカンドオピニオンを利用するのも一案です」と小林先生はアドバイスします。
次号(家庭画報2023年6月号)では、こうした診断結果にもとづいてどのように治療法を選択していけばよいのか治療の意思決定にかかわる情報をお届けします。
【症状がある場合の検査は?】
診察による医師の判断でバランスよく受けることに
症状が出て病院を受診した場合の検査は診察した医師の見立てによって変わってきます。医師ががんの可能性が低いと考えた場合は超音波検査やCT検査といった体に負担の少ない検査が行われることが多いといいます。
反対にがんの可能性が高いと考えた場合には超音波検査やCT検査のほかにも追加検査が行われ、それで異常がなくても安心できなければさらに詳しい検査を実施することもあります。
やっかいなのは、いろいろな検査を行ってもがんが見つからなかったときです。患者さんには自覚症状があるため、納得できず医療機関を転々とする人もいます。このようなときは、症状が軽微でなおかつ悪化することがなければ、しばらく様子を見てもよいそうです。
【がんが疑われたときの心の動き】
2週間経っても落ち込みが回復しないときは相談を
がんを告げられると大きなストレスを抱え、心の反応として最初にショックや混乱が起こり、次いで不安や落ち込みに襲われます。その後、現実に向き合えるようになり、2週間ほどで通常反応に戻っていくことが知られています。
しかし、なかにはうつ状態になり、食事が喉を通らない、夜眠れないなど日常生活に支障をきたすこともあります(下図参照)。
がん患者における情報提供後の心の反応秋月伸哉、明智龍男、内富庸介.サイコオンコロジー.JIM 2000:10:775-778を参考に作成このような状況になったときは一人で抱え込まず、周りの人につらい気持ちを話してみましょう。
また、精密検査中に仕事を辞めてしまう人もいますが、仕事を続けながら治療することは可能です。治療の見通しが立ってからでないと仕事の調整はできないので、急がずに待つことが大事です。
「がん相談支援センター」では、心のケアや仕事に関する相談にも応じてくれます。