365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
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長いひも状の花穂が何本も垂れ下がるように咲くのは雄花。ふわふわして見えるのは白い雄しべをたくさん突き出しているためです。■属科・タイプ:ブナ科の落葉中高木
■花期:5月中旬〜6月中旬
イネ以前からの栽培植物。クリの花を見て縄文時代に思いを馳せる
秋に食べるほくほくのクリが大好きなかたはたくさんいらっしゃると思います。では、クリの花を知っているかたは?というと、あれれ?となるかたも多いのではないでしょうか。
ちょうど今、クリの花が咲いているので、散歩道で気をつけて探してみてください。なにしろ、クリは古くから親しまれている家庭果樹ですから、散歩道でもクリの木を植えているお宅がきっと見つかると思います。
世界で栽培されているクリには、日本グリ、中国グリ、ヨーロッパグリ、アメリカグリがあり、日本で栽培されているほとんどが、日本原産の日本グリです。環境が適していれば、クリの木は100〜200年、あるいは数百年は生きるといわれています。
丹波グリで有名な京都の丹波地方には、そんな古木が現在でも元気に生き続けているそうです。クリの栽培は縄文時代にはすでに始まっていたといわれ、イネの伝来以前から現在まで続く、日本最古の栽培植物。相当な樹齢の木を見かけても不思議ではありません。
クリの花は淡い緑色なので、遠目にはわかりにくいかもしれませんが、木全体がふわふわした印象に見えたら開花しているので、近づいて見てみてください。幼木でもたくさん花が咲きます。さて、そんなクリの花はといえば、これがとてもユニークな形状で、長いひもが何本も垂れ下がっているように咲きます。
1本の木に雄花と雌花が別々に咲くのですが、長いひも状の穂になるのが雄花で、雌花は穂の基部にあり、クリの原型のようなイガイガした形をしています。ひも状の雄花を見つけたら、その基部も観察してみてください。雌花は白い雌しべだけを出し、雄しべの花粉を付けてムシがその上を歩くのを待っています。
ただし、クリの木は自家不和合性といって、同じ木の雄花と雌花では受粉しても結実しにくいため、実をたくさん収穫したい場合には、2本以上を植えるのがおすすめです。
最近では‘ぽろたん’など、家庭栽培でも大きな実が収穫できる品種が出回り、クリの栽培がより楽しくなっています。
栽培の難易度
「桃栗3年柿8年」と言われるように、クリは生長が早く、植えてから3年くらいで実が収穫できます。日当たりがよく、肥沃で水はけのよい場所に植えます。植えつけ時に元肥を施し、たっぷり水やりをします。幼木の間は土壌が乾いたら水やりしますが、成木になれば水やりは雨まかせでかまいません。
幼木の間は主枝を3〜5本くらいと決めてほかの枝を剪定し、しっかりとした骨組みをつくります。成木になったら樹高が高くなりすぎないように、地面から4mくらいになるように主幹を切り戻します。剪定は落葉後の1月〜2月に行います。植えつけの翌年以降は、毎年2月と10月に木の根元に緩効性肥料を施します。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。