南の島の元気な食材が織りなす、美しき「琉球ヌーヴェル」
「沖縄の食材とフランス料理がこれほど相性がいいとは思いませんでした」と熱く語るのは中洲達郎料理長。そう、「星のや竹富島」のディナーはフランス料理の「琉球ヌーヴェル」スタイルです。「たとえば魚介類。淡泊で水っぽいイメージをお持ちの方も多いと思うのですが、その繊細さを生かすのが“掛け合わせる料理“フレンチ。
“琉球ヌーヴェル”ディナーより「カジキと和牛のテリーヌ ガトー仕立て ビーツとハイビスカスのピュレを添えて」。地元の陶芸作家・大嶺実成氏の器との見事なコラボレーションです。また、おなじみのゴーヤーもそのままでは苦いだけだけれど、肉の脂をプラスすることで、まったく異なる表情を見せてくれる。今帰仁(なきじん)アグーや車海老……。魅力的でポテンシャルの高い食材ばかりで、料理人心が次々と刺激されるんですよ」
オープンから6年。各地の生産者さんたちとの付き合いもどんどん深くなるにつれ、料理への思いもピュアに、真摯になったという料理長。「料理はすべて生産者さんありき。皆さんの想いをどう料理で伝えるか、お皿で表現するのが僕たちの大切な仕事だと改めて思うことが多くなりました」
「仔豚のローストとブーダンブラン 春野菜と共に」。今帰仁アグーの持ち味をシンプルに生かした骨太な一皿です。そして沖縄のなかでも、ひときわ豊かな自然と文化が残る竹富島にあることが、この宿の料理に、大きな大きな影響を与えています。
「命草(ぬちぐさ)、という考え方もそのひとつ。島に自生する薬草(ハーブ)のことですね。その昔、お医者さまがいなかった時代には、薬草の名人が、島の人々の健康を守っていたのだそうです。今も島の人々は日常的に使っていらっしゃいます。大切に伝えられている命草の知恵に限らず、食の知恵や生活の知恵。地元のおじい、おばあに教わることばかりです」
敷地の一角には、長命草やイーチョーバー(フェンネル)などの命草が育てられているキッチンガーデンも。フレッシュな命草は「畑人(はるさー)の朝ごはん」や「琉球ヌーヴェル」ディナーの、時に主役に、時に縁の下の力持ちとして大活躍してくれます。
「畑人の朝ごはん」の“琉球朝食“バージョン。伝統的な沖縄の重箱料理を凝縮して、朝用にアレンジ。“海風・ブレックファスト”は、魚介の旨みの命草がたっぷり。ほかに“ゆし豆腐粥朝食”、“シリアル・ブレックファスト”もあり。「今日の魚料理・ミーバイ(ハタ)のポワレに添えたソースヴェルデュレットには、ミーバイの骨から取ったスープに長命草やハママーチ(琉球よもぎ)などを加えて仕上げました」。他では出会うことのできない、まさにワン・アンド・オンリーの「琉球ヌーヴェル」。「琉球いのししや琉球いちご、久米島の鶏肉、すっぽん……。使ってみたい食材がありすぎるのが、嬉しい悩みですね(笑)」
「ミーバイのポワレ 香ばしいコンディマンとともに ソースヴェルデュレット」。ミーバイのゼラチン質の旨味を巧みに引き出した一品。