野田秀樹さん率いるNODA・MAPの最新作は『兎、波を走る』。高橋一生さん、松たか子さん、多部未華子さんといった魅力的な顔ぶれで、6月から東京ほか2都市で上演されます。作品の大枠のモチーフは、あの『不思議の国のアリス』。つぶれかかった遊園地で繰り広げられる、劇中劇(ショー)のような話になるという本作品への期待感などを、2度目のNODA・MAP出演となる高橋さんに伺いました。
――NODA・MAP初主演だった2021年の『フェイクスピア』での演技、本当に素晴らしかったです。早くも2度目の出演が決まった時は、どう思われましたか?「野田さんにまたお声がけいただいて、純粋に嬉しかったです。『フェイクスピア』を作っている最中から、これまでにない充実感があったので、とてもありがたく思っています。俳優でもある野田さんは、演出のみされている方とはお芝居を作る過程の楽しみ方が違っていて、まずは自由にお芝居を見てくださるし、本当に一緒に作品を作っていく方なのだなと感じるんです。本番中も、舞台袖でみんなのお芝居をニコニコしながら眺めていたり。そんな野田さんを、またこっそり盗み見することも楽しみの一つです」
――舞台袖の野田さんをそっと見ている一生さんも、ニコニコなさっているのでしょうね。「出番が近づくと、“さあ、行くぞ!”という感じでぴょんぴょん跳ねたりする野田さんの後ろ姿を見るだけで、すべてが報われるというか、芝居をやってきてよかったな、と感じます。こんなにも芝居を楽しんで、板の上に向かうことにウキウキしている人と一緒にやれて、幸せだなと。舞台に出たら出たで、野田さんは自分でわざと足をもつれさせてみたり、実験的なことばかりするんです。自分の中の新しい感覚を常に舞台の上で探している感じがして、見ていて面白いし、刺激を受けます。一緒にいられて幸福だなと、ここまで思わせてくれる人は、あまりいない気がします」
――そんな野田さんが“作品として書き残しておきたい”との思いで執筆中という『兎、波を走る』。台本の一部を読まれたそうですね。「『不思議の国のアリス』の世界ではあるんですが、物語としては当然違うものになっていて、『フェイクスピア』の次にこう来たか!と思いました。虚実が見事にないまぜになっていて、また新たな虚実の皮膜の間を歩くことになるのだろうなと。それをいかにエンターテインメントな劇に昇華させていくかは、僕ら次第。俳優一人ひとりがどういう意識を持って稽古に臨むかで、野田さんの世界がどう広がるかも変わってくるのではないかと思います」