――“人は器でしかない”は、根っからの俳優さんだからこその言葉のようにも感じます。普段、どうやってリフレッシュしているのでしょう?「反復運動です。ただずっと歩くとか、ひたすら泳ぐとか、ただただ山歩きをするとか。そうやっていると、呼吸以外のことなんて考えていられなくなって、無になれる。それが僕にとってはとても大事な、いちばんのリフレッシュ法です。自分を1回空っぽにしようと思っても、そうできるものじゃないので、何かを無心になるまでやることで、空っぽにするんです」
――そんな一生さんが、最近気になっているものや、気に入っているものがあったら教えてください。「この一年ずっと気になっていたのは、ウール、羊毛です。以前は少し敬遠していたんですけれど、洗えるウールを揃えて着てみたら、これが非常に優秀で。シルクも素晴らしいですね。やっぱり、動物や虫はすごいなというのが、近頃気になっていることです」
――ありがとうございます。動物といえば、今回の舞台のタイトルは『兎、波を走る』。不思議な雰囲気を醸し出しているメインビジュアルはもちろん、ニンジンを兎の耳に見立てた個別ビジュアルもユニークです。「実物のニンジンを上から吊るして撮影しました。メインビジュアルも、実際に松さん、多部さんと一緒に撮ったもので、合成写真ではないんです。その場で野田さんの演出を受けながら撮影したんですが、御大(撮影者の篠山紀信さん)が色々とユニークな注文をされるので、なかなかキツい体勢での撮影でした。ですが、意味があるものにはなったと思います。その意味がどういうものなのか。作品作りは、まだこれからですけれども、ぜひ劇場で体感していただけたらと思います」
高橋一生/たかはし・いっせい
1980年生まれ、東京都出身。テレビドラマ・映画・舞台と幅広く活躍。2012年に舞台『4 four』で文化庁芸術祭賞演劇部門新人賞、2020年に舞台『天保十二年のシェイクスピア』で菊田一夫演劇賞、2021年の舞台『フェイクスピア』で読売演劇大賞最優秀男優賞を受賞。近年の主な出演作は、ドラマ『岸辺露伴は動かない』『6秒間の軌跡〜花火師・望月星太郎の憂鬱』、映画『ロマンスドール』『スパイの妻』、舞台『フェイクスピア』『2020』など。主演映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』が2023年5月26日より公開予定。
NODA・MAP第26回公演『兎、波を走る』
作・演出/野田秀樹 出演/高橋一生、松たか子、多部未華子、秋山菜津子、大倉孝二、大鶴佐助、山崎 一、野田秀樹 ほか
2023年6月17日~7月30日/東京・東京芸術劇場プレイハウス 8月3日~13日/大阪・新歌舞伎座 8月17日~27日/福岡・博多座 ※東京公演は5月28日、大阪・博多公演は7月8日よりチケット一般発売
https://www.nodamap.com/usagi/ 取材・構成・文/岡﨑 香 撮影/古水 良 ヘア&メイク/田中真維(MARVEE) スタイリング/秋山貴紀(A Inc.)