潤う成熟世代 快楽(けらく)─最終章─ 作家・工藤美代子さんの人気シリーズ「快楽」の最終章。年齢を理由に恋愛を諦める時代は終わりつつある今、自由を求めて歩み始めた女性たちを独自の視点を通して取材。その新たな生き方を連載を通じて探ります。
前回の記事はこちら>> 第13回 不倫の恋は死語ですか?(後編)
文/工藤美代子
彼女は週刊誌やネットのニュースでパパ活に関する情報を仕入れたのかと思ったら違った。実はアサミさんの娘さんの友人たちで、パパ活をやっている人が何人かいて、娘さんから話を聞いたらしい。
初めは、そんな人たちと付き合ってはいけないと娘さんに注意したのだが、反論された。パパ活をやっている友人たちは意外に堅実な人も多いのだそうだ。
「工藤さんは、そういうことをやっているのは中学生とか高校生の女の子だと思っているでしょ。でも実際はもう少し年齢が上なのよ。普通に大学へ通ったりお勤めしている、20代から30代の娘さんたちよ。彼女たちは、けっこうしっかりしていて、お互いのネットワークもあって、結束も堅いの。あなたが考えるようなお小遣い欲しさに年寄りとホテルに行く未成年の子供たちじゃないらしい」
私は慌てて手帳を取り出してアサミさんの喋ることをメモした。彼女の娘さんは確か25歳くらいだ。
要点を述べると次のようになる。ただし、これはあくまで私の友人から取材した内容なので、パパ活のすべてではない。他の形態もあるかもしれないが、とにかくパパ活をしているのは、意外に真面目そうに見える娘たち。そして、そう簡単には肉体的な関係を持たないそうだ。
彼女たちの間で一番人気があるのは港区に家を持っている男性。不動産が高い地区に持ち家があるのは、経済的に豊かな証拠になる。
あの手、この手でオヂからお金を引っ張る手口はなかなか多彩だという。しかし、単独では難しい。仲間がいて、お互いに助け合って成立する技(わざ)とのこと。
たとえば、オヂからまとまった額のお金をもらうには理由が必要だ。妊娠したというのは、お小遣い程度ではない額を引き出すための絶好の口実となる。市販で妊娠しているかどうかを調べるキットがあって陽性と出たら妊娠している。そこで、彼女たちのグループで、妊娠検査キットで陽性のものを持っている人がいたら写真を送ってくれとLINEで頼む。その写真を皆で使い回す。
学費として引っ張るのも常套手段だが、実は大学生じゃないのが相手にわかって、詐欺容疑で逮捕されたケースがあった。したがって、まったくの噓は危険だと彼女たちは認識している。だが、何らかの噓をつかなかったら、パパ活は続けられない。よく言われるのは「オヂに夢を見させてあげられる自信がないのなら、頂きはやめようよ」ということらしい。
「頂き」とはお金をもらうという意味だ。このへんは、ホストクラブのホストと客の関係にも似ている。ホストも客に疑似恋愛の夢を見させる。ただ、パパ活の方がもう少しアルバイト感覚だし、密やかかもしれない。オヂを経済的に破滅させるまで追い詰めるなんていう例は稀だ。