365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> アルケミラ・モリス
繊細な花がふんわりと咲くアルケミラ・モリス。優しい葉色にさらに花色が加わり、花壇がより明るくなります。■属科・タイプ:バラ科の宿根草
■花期:5月〜7月
■草丈:30〜60cm
手のひらのような葉にたまる朝露が美しい
私がアルケミラ・モリスという植物を知ったのは、初めてイギリスを訪ねたときのことです。カントリーサイドで宿泊し、よく朝、ガーデンを散策していたら、かわいらしい手のひらのような葉に朝露がたまっているのを見かけました。
たくさんたまっているものもあれば、大きな一粒だけのものもあるのですが、それが朝の光を受けて宝石のようにキラキラ輝いている様子はたまらなく美しく、すっかり魅了されてしまいました。
ちょうどガーデンに出てきた宿のオーナーさんに「アルケミラ・モリスだよ」と名前を教えてもらいました。「日本でも庭でよく使う?」と聞かれ、見かけたことがないと答えましたが、私が見たことがないだけで、もしかしたら以前から日本でも育っていたかもしれず、適当に答えてしまったことを少し反省しました。
葉についた朝露にご注目を。繊細な毛で覆われたアルケミラ・モリスの葉には朝露がきれいにたまります。アルケミラ・モリスの葉に朝露がきれいにたまるのにはちゃんと理由があります。葉をさわるととてもやわらかで、全体に細かい毛に覆われているのがわかります。それが水を弾くため、朝露が玉になってたまるというわけです。とても撥水性がよい葉なのですね。
そのアルケミラ・モリスがちょうど花期を迎えています。葉より少し黄色みがかった花はとても繊細で、ふんわりと煙るような姿が美しく、ナチュラルな雰囲気を感じさせます。
草丈が低めで、広がって育つので、観光ガーデンではよくボーダーのいちばん手前に植えられています。ほかの花色を邪魔せず、しかも軽やかなボリューム感があることから、今では日本のガーデンでも定番の植物となっています。
個人のお宅でも利用しているかたは多く、きっと散歩道でも見かけることがあると思います。ぜひ早朝に散歩して、朝露の美しさをご堪能ください。葉にたまる朝露を見たら、きっとその日一日が気持ちよく過ごせると思います。
栽培の難易度
日なたでも明るい日陰でも栽培できます。夏に気温が上がるエリアでは、直射日光をさえぎることができる落葉樹の下などに植えるのがおすすめです。水はけのよい土壌を選び、元肥を施してから植えつけます。植えつけ時にたっぷり水やりすれば、その後は雨まかせでかまいません。花が終わったら花茎の根元から摘み取ります。葉は秋まで観賞できます。耐寒性が強いので、温暖地ではとくに対策をしなくても冬越し可能です。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。