365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> リクニス・コロナリア
葉も茎も白い毛に覆われ、草姿全体が白く見えるため、花色の濃いピンクがよく映えます。後ろの淡い紫色の花はネペタ。リクニス・コロナリアの濃いピンクとの花色合わせがとても素敵。■属科・タイプ:ナデシコ科の宿根草
■花期:5月〜7月
■草丈:40〜60cm
草姿全体の白さが際立ち、花色がよく目立ちます
初夏に観光ガーデンを訪ねると、必ずといってよいほど見かけるのがリクニス・コロナリアです。これほどプロに愛用されている花なのに、あまり名前を知られていないように感じられるので、きちんとご紹介しておかなくては……。
花径は3cmほどで基本種は一重咲き。花色は濃いピンク、白、赤、とその複色のみ。派手さはなく、花色のバリエーションが豊富なわけでもないのに、プロのガーデナーさんにこれほど人気があるのはどうしてだろう、と初めは思っていましたが、何度も見ているうちにその理由に気付きました。
リクニス・コロナリアが植えられた箇所は他と比べると明るい印象なのです。というのも、リクニス・コラナリアは葉も茎も白くて繊細な毛に覆われていて、まるでビロードのような質感。
花色ばかりに気を取られていましたが、株全体を眺めると、周囲の植物より白さが際立ってよく映えます。葉や茎の色まで計算に入れて花壇をデザインするガーデナーさんにとって、リクニス・コロナリアの白さはとても貴重な存在なのだと知りました。
白い花弁で中心に淡いピンクが入る‘エンジェル ブラッシュ’。丸みのある花形もかわいらしく優しい印象です。ガーデナーさんに話を聞いて、もう一つ、リクニス・コロナリアの魅力を知りました。日本の梅雨から夏の高温多湿に弱い、とよくいわれますが、「そんなことはないですよ。乾燥ぎみに管理していれば、蒸れて傷んでしまうこともあまりなく、花の時期が終わってもシルバーのきれいな姿が楽しめます」とガーデナーさん。
草姿があまり乱れずに育つので、管理の手間もかからないそうです。多くの植物を同時に管理していくガーデナーさんにとって、管理が楽な植物ほどありがたいものはないそうです。
散歩道で、草姿の白さが際立つ花が咲いていたら、リクニス・コロナリアの名前を思い出してください。
栽培の難易度
日当たり、風通しのよい場所に植えます。水はけのよい土壌に元肥を施してから植えつけます。たっぷり水やりしたら、その後は雨まかせでかまいません。やや乾燥ぎみに管理します。終わった花がらは随時摘み取り、黄色くなった葉も摘みます。大株になるほど、内側が蒸れやすくなるので、古い枝は切り戻し、風通しがよくなるように気をつけます。耐寒性があるので、温暖地ではとくに対策を施さなくても冬越しします。ただし、気温が高く雨が多いエリアでは、二年草扱いとなることもあります。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。