“この礼拝堂は、私にとって一生の仕事の集大成である”Cette chapelle est pour moi
l’aboutissement de toute ma
vie de travail. ──Henri Matisse
マティスが晩年、精力的に取り組んだロザリオ礼拝堂内観。ステンドグラスのみならず設計全体に意見し、十字架から照明にいたるまでデザインした。マティス自身が冬の朝11時頃がとりわけ美しいと評したタイミングで撮影。“色は、それ自体が世界である”La couleur est un monde en soi.
──Henri Matisse
療養などのためニース近郊ヴァンスに構えたアトリエ「夢」荘(ル・レーヴ)の窓からの景色を描いた作品。ニースの観光ポスターにもなった。アンリ・マティス 《ざくろのある静物》 1948年 ニース市マティス美術館 Musée Matisse de Niceアンリ・マティス 《赤の大きな室内》 1948年 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館 Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne-Centre de création industrielle「歓びを描くマティス作品は不安を抱える現代世界をもあたたかく包み込みます」(オレリー・ヴェルディエさん)
オレリー・ヴェルディエさん(ポンピドゥー・センター/国立近代美術館 近代コレクション チーフ・キュレーター) アンリ・マティス《 マルグリットと黒猫》 1910年 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館 Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne-Centre de création industrielle世界有数のマティス・コレクションを誇るパリのポンピドゥー・センター。チーフ・キュレーターを務めるオレリー・ヴェルディエさんに話を伺いました。
「彼は、人生の最後まで自分のアートについて試行錯誤を続けました。そのため、時期により作風や技術が異なります。当館は、初期から晩年の作まで余すところなく所蔵しています。
すべてに通じる特徴は、モチーフがキャンバスの外にまで広がるような構成力だといえるでしょう。故郷の北フランスと晩年を過ごした南フランスを訪れると、彼がいかに色と光を欲していたのかが深く理解できます」
ヴェルディエさんは、東京都美術館で開催中の『マティス展』の監修を務めています。
「彼は“私の計画は、自分たちの時代の新しいサイン(徴〈きざ〉し)を見つけることだ”と語りました。不安を抱える現在、彼の作品は世界を友好的につなぐ、私たちにとっての新しいサインとなることでしょう」
“空に、木に、花に、歓びを見つけよう”Trouver la joie dans le ciel, dans les
arbres, dans les fleurs.
──Henri Matisse
2021年に修復を終え、ニース市マティス美術館のメインホールを飾る、約4×8メートルの晩年の大作。ガッシュ(不透明水彩絵の具)で塗られた紙をマティス自身が鋏で切り抜いて構成した。アンリ・マティス 《花と果実》 1952-1953年 ニース市マティス美術館 Musée Matisse de Nice マティス展
2023年8月20日まで 日時指定予約制
東京都美術館
https://matisse2023.exhibit.jp/絵画に加え、彫刻、ドローイング、版画、切り紙絵、ロザリオ礼拝堂に関する資料まで、各時代の代表的な作品を一堂に展示。「マティスは彫刻家としても重要な作家。彼の作品を深く理解することができるドローイング(デッサン)も、ぜひじっくりとご鑑賞ください」(ヴェルディエさん)
〔特集〕アンリ・マティス
01
アンリ・マティス希望の色と光
この特集の掲載号
『家庭画報』2023年6月号
撮影/小野祐次 取材・文/安藤菜穂子 コーディネート/大島 泉 協力/公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都美術館 ポンピドゥー・センター 朝日新聞社 NHK NHKプロモーション アンリ・マティス財団(Succession H.Matisse)
『家庭画報』2023年6月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。