365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> スモークツリー
淡いピンクのふわふわをたっぷりつけたスモークツリーが、生け垣から枝垂れているシーンに出会いました。ボリューム感ある姿とグラデーションの美しさに目を奪われました。■属科・タイプ:ウルシ科の落葉中木
■花期:6月〜8月
ふわふわになるのは雌木のみ。しゃれたカラーバリエも魅力です
それまでは気づかなかったのに、ふわふわの花を咲かせると、「あっ、あそこにスモークツリー!」と、遠目にもその存在を認識できます。煙の木=ケムリノキという和名は、花が咲いたふわふわをじつに的確に表していると思います。ちなみにスモークツリーは英名で、学名をコティヌス・コッギグリアといいます。
花が咲いた、と書きましたが、正確にはあのふわふわは花後に伸びた花柄(かへい)で、ふわふわが出現する前に小さな黄色の花が咲きます。雌雄異株で、ふわふわになるのは雌木のみ。雄木は花柄が伸びても煙のようにはなりません。ということは、個人邸の庭や観光ガーデンなどで栽培されている多くが雌木というわけです。
緑色の葉に赤いふわふわの組み合わせ。花柄はこれからさらにふわふわになってきます。他の木ではなかなか見かけないユニークなふわふわの姿が大人気のスモークツリーですが、個人邸の庭木としてだけでなく、観光ガーデンでもよく利用されています。
イギリス人のガーデナーさんに伺うと、イングリッシュガーデンでもスモークツリーはよく使うそうで、その大きな理由は、花壇の背後にふわふわのスクリーンを作れることなのだそうです。幻想的な背景の前にさまざまな花を咲かせると、それだけでとても素敵な景色になると聞き、シンボルツリーとして以外でも活躍する木なのだとあらためてその魅力を感じました。
しかも、スモークツリーには葉色のバリエーションがあり、いずれも少しグレーがかったシックな葉色でとてもしゃれています。その葉色に合わせるようにふわふわの花柄も色が異なり、花壇の雰囲気に合わせて色を選べるのもスモークツリーの魅力だと思います。
イギリスの庭で、赤紫の葉にふわふわの赤い花柄をつけたスモークツリーを背景に赤い花が咲く美しいシーンを見たときの感動は今でも忘れられません。
栽培の難易度
比較的成長が早いので、スペースを確保できる場所を選びます。日当たりがよく、水はけのよい土壌に植えます。植えつけ時に元肥を施し、たっぷり水やりします。幼木の間は、土壌が乾燥したら水やりしますが、成木になったら雨まかせでかまいません。幼木のときは枝がたくさんでて樹形が乱れがちになるので、長く伸びすぎた枝は随時切り取ります。成木になれば自然に樹形が整いますが、横に枝が伸びやすいので、長すぎるものは切り落とします。剪定は落葉期に行い、同時に株元に緩効性肥料を施します。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。