365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> ベロニカストラム
クガイソウの仲間のベロニカストラム・シビリカム。淡い青紫の花穂が何本も並ぶと、涼しげでエレガントな雰囲気に。■属科・タイプ:オオバコ科の宿根草
■花期:6月〜8月
■草丈:100〜150cm
ラベンダー色の花穂を揺らす姿がとても涼しげ
北海道~本州の山地に自生するクガイソウをご存じでしょうか。学名をベロニカストラム・ジャポニカといい、日本の固有種です。知ってはいたものの、クガイソウが庭でとても素敵に利用できることを私は長く知りませんでした。
7月にイギリス各地のガーデンを訪ねた際、どこの庭でもベロニカストラムがよく咲いていて、「これ、クガイソウよね」とびっくりしました。あとで調べるとイギリスで咲いていたのはベロニカストラム・シビリカムという種類で、日本の固有種のクガイソウとは種類が異なるのですが、すっとした花穂と淡い青紫の花色の涼しげな雰囲気はよく似ていました。
手前にサルビア・ネモローサ、奥にベロニカストラム。穂状に咲く花だけの濃淡ブルー系のシーンはとてもクールでエレガントでした。イギリスのガーデンで出会ったシーンです。葉が層になり、何段もつく様子にもご注目を。その後、日本のガーデンを訪ねたときに注意して見てみると、ベロニカストラムがけっこう使われていることに気づきました。「私としたことが……」と反省。
草丈が1m以上になるので、植栽の後方に植えられていることが多いのですが、涼しげな花穂を背景に、手前でさまざまな花が咲く景色はとても美しく、あらためてベロニカストラムが魅力的な植物であることを認識しました。
イギリスで見たベロニカストラム・シベリカムは涼しい気候を好むので、日本では管理に工夫が必要ですが、さまざまな園芸品種があり、なかには日本の温暖地でも比較的容易に栽培できるものもあります。
ちなみにクガイソウは茎をとり巻くように葉がつき、それが何層にもなることから付けられた名前で、漢字で書くと九蓋草、または九階草となります。これはほかのベロニカストラムでも同様なので、散歩道で出会ったら、葉が何層になっているか数えてみてください。
栽培の難易度
日当たりがよく、風通しのよい場所で、水はけのよい土壌に植えます。温暖地の場合は、木陰など夏の間は直射日光を避けられるような場所に植えるのもおすすめです。植えつけ時に元肥を施し、たっぷり水やりしたら、その後は雨まかせでかまいせん。風当たりが強い場所では倒伏防止のために支柱を立てておきます。花穂がすべて咲き終わったら摘み取り、黄色くなった葉も取り除きます。耐寒性は強いので、温暖地では冬越しの対策は必要ありません。毎年4月くらいに緩効性肥料を株元に施します。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。