今、西洋で見直されている「アニミズム」とは
佐々木 日本人にとって「神様」がわかりにくくなった理由の一つは、西洋のゴッドを神と訳してしまったことですね。
鏡 ゴッドは一神教の神であって、日本古来の八百万(やおよろず)の神とはまったく別ですからね。もっとも、西洋でも、古代ケルト人やゲルマン人の信仰は自然を崇拝する多神教で、神道と通じるものもある気がします。
ただ、そういうものが近代においても残っている日本は、やはりユニークだと思います。西洋ではキリスト教が広まって以降、ほかの宗教は野蛮な迷信で研究する価値すらないという位置づけでした。しかし、宗教学の先駆者といわれるマックス・ミュラーが「一つの宗教しか知らない人間は宗教がわからない」と説いたあたりから、宗教が初めて複数形になった。
そこで、宗教の起源とは何か? という議論が起こったとき、最初に出てきた説の一つが、自然界のあらゆる事物や現象に霊(アニマ)が宿るとするアニミズムだったんですね。
左・魔女や妖精、ネッシー、アーサー王など英国の伝説が残る地のガイドブック。右・鏡さんの蔵書の大半は現代占星術が盛んな英国で出版されたもの。上から、アニミズムへの最近のアプローチをまとめた本、イギリスの聖地が一直線に並んでいるという説「レイライン」を唱えた本「神霊的想像力」をテーマにした学会の論文集。西洋から見ると神道もアニミズムの一つなのですが、その世界観がこの20年ほど、宗教学や人類学の分野で再評価されていて、学者たちがその言語化に熱心に取り組んでいます。
スピリチュアルの存在と人間の関係はインタラクティブ(双方向)で、両者を媒介する存在「エージェント」には神様も村も会社も含まれ、それぞれある種の人格を持っている。そのインタラクション(相互作用)がアニミズムの本質なのではないか……といったことがいわれ始めています。