佐々木 アニミズムはなぜ今、再評価されているのでしょう?
鏡 自然破壊が進み、解決策が見いだせない中、アニミズム的世界観をもう一度真摯に考え直さなければ、という動きが出てきたのではないでしょうか。
暮らしに“魔法”を取り戻す
佐々木 西洋占星術は神話の神々と深い関係性がありますね。
鏡 西洋世界で占星術は多神教的世界を生き延びさせた重要な回路の一つなんです。世界は一つの法則で動いているはずだという一神教的な側面もありますが、金星は愛と美の女神ビーナス、火星は軍神マーズというふうに結びついていて、我々は占う際、星の神々にお伺いを立てるわけです。
キリスト教世界ですから星を表立って崇拝することはないけれど、ダイモーン(神霊)とみなす考え方が占星術には潜在しています。特にルネサンス時代にはキリスト教のもとでも、星の神霊に働きかける魔法が復興した。凶星をなだめる魔法もありました。
佐々木 京都の八坂神社の主祭神である素戔嗚尊(すさのをのみこと)は疫病封じの神様と思われていますが、実は疫病が流行したのは素戔嗚尊の祟りから。祇園祭は神様をもてなして、疫病を封じようと始まったものといわれています。似通っていますね。
鏡 近代化とは、そうした祟りや呪いも含めた魔法が解けていくプロセスなんですよね。魔法は、家を建てる方角や階級ごとに着られる衣服の色などを定めて個人を縛る一方、社会にコミットしているという安心感を与えてくれます。
現代は自由で選択肢が格段に広がった分、心もとなさを感じている人も少なくないと思うんですね。星占いのラッキーカラーくらいの“ゆるやかな魔法”を日常に取り入れると、生きやすいかもしれません。