世界のスパークリングワイン最前線 第8回（全10回） 見ているだけで心をときめかせてくれる、グラスを満たす泡。スパークリングワインは今、世界のさまざまな国で造られ、土地に根差した個性溢れる高品質なものが続々と誕生しています。特徴を知ると、味わいもより深く感じるもの。各国の魅力を学び、日々の食卓に華を添える、お気に入りの一本を見つけてください。
前回の記事はこちら＞＞ スパークリングワインデータの見方 （1）ぶどう品種：CH=シャルドネ PN=ピノ・ノワールおよびピノ・ネロ PNP=ピノ・ノワール・プレコス M=ムニエまたはピノ・ムニエ PA=ピノ・オーセロワ PB=ピノ・ブラン CF=カベルネ・フラン GV=グリューナー・フェルトリーナー Sy=シラーズまたはシラー VI=ヴィオニエ RL=リースリング PRO=グレーラ CB=シュナン・ブランまたはシュナン ME=マカベオ PL=パレリャーダ XA=チャレッロ 甲州=甲州 （2）色 （3）希望小売価格 （4）問い合わせ先 オーストラリア――味わいに反映された“時の流れ”
現在、最大の高級ワイン産地は南オーストラリアのバロッサ・ヴァレーで、栽培面積の半分を占めるのがシラーズ。19世紀末、世界のワイン産地を壊滅状態にした害虫フィロキセラは砂地では生息できなかったため、砂の多い土壌のシラーズは無傷。ゆえに100年を超える古樹が現存し、奥行きのあるワインを造り出しています。
〈左〉House of Arras 2009 Grand Vintage（ハウス・オブ・アラス 2009 グラン・ヴィンテージ）
（1）CH66％、PN34％ （2）白 （3）1万5000円 （4）ファームストン
1995年に醸造家エド・カー氏が10年以上の歳月をかけて立ち上げたスパークリングワイン専門ブランド。輝きのある黄金色、繊細な気泡。仕上げの糖分調整は2.5グラム/Lながら、ぶどう由来の際立つ熟度と冷涼地タスマニアらしい清涼感のある味。
〈右〉Langmeil Sparkling Shiraz（ラングメイル スパークリング シラーズ）
（1）Sy100％ （2）赤 （3）6050円 （4）スマイル
ドイツ系移民が開拓したバロッサ･ヴァレーのほぼ中央部にあり、1843年に植樹された世界最古のシラーズは歴史的遺産。樹齢10〜100年以上のシラーズから造られた赤のスパークリングは、ミントやエスニック風の香りで泡と渋みもなめらか。山椒たっぷりの鰻のかば焼きと。
温暖化により、冷涼産地のタスマニアはシャルドネやピノ・ノワールの栽培適地として注目され、国際品評会でも高評価を受けています。
南アフリカ――虹の国によく似合う祝杯の泡
350年以上のワイン造りの歴史がある南アフリカ。白のシュナン・ブランや黒のピノ・タージュが代表的ですが、欧州系品種の導入や品質重視のプレミアムワインへのシフトも進んでいます。
〈左〉Delaire Graff Sunrise MCC NV（ドゥレイア グラフ サンライズ ブリュット MCC NV）
（1）CB64％、CH30％、CF6％ （2）白 （3）1万4300円 （4）シグニチャー
世界最大のスクエアエメラルドカットのダイヤモンドから命名。世界中のVIPをダイヤモンドで魅了するローレンス・グラフ氏が所有するドゥレイア グラフエステートの日あたりのよい畑で育ったぶどうから造られる泡。ライムやメロンが香る繊細な味。
〈右〉Graham Beck Cuvee Clive 2017（グラハム・ベック キュヴェ・クライヴ 2017）
（1）CH60％、PN40％ （2）白 （3）6710円 （4）モトックス
醸造施設をシャンパーニュから取り寄せ、キャップ・クラシックのスパークリングワイン造りに注力している代表格。メゾンの顔であるNVはマンデラ元大統領の就任式などにも登場。最上級のキュヴェ・クライヴは柑橘系アロマと長熟由来のうまみがバランスよく調和している。
発泡性ワインは、1992年に伝統的製法を“キャップ・クラシック（MCC）”と呼称するように制定されましたが、品種の規定はなくシュナン・ブラン、シャルドネ、ピノ・ノワール、カベルネ・フラン等が使われています。醸造等の進歩で高品質かつ手頃な泡が増えています。
表示価格はすべて税込みです。 監修・取材・文／青木冨美子 撮影／本誌・坂本正行 スタイリング協力／岩埼牧子
『家庭画報』2023年7月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
