世界のスパークリングワイン最前線 第9回(全10回) 見ているだけで心をときめかせてくれる、グラスを満たす泡。スパークリングワインは今、世界のさまざまな国で造られ、土地に根差した個性溢れる高品質なものが続々と誕生しています。特徴を知ると、味わいもより深く感じるもの。各国の魅力を学び、日々の食卓に華を添える、お気に入りの一本を見つけてください。
前回の記事はこちら>> スパークリングワインデータの見方 (1)ぶどう品種:CH=シャルドネ PN=ピノ・ノワールおよびピノ・ネロ PNP=ピノ・ノワール・プレコス M=ムニエまたはピノ・ムニエ PA=ピノ・オーセロワ PB=ピノ・ブラン CF=カベルネ・フラン GV=グリューナー・フェルトリーナー Sy=シラーズまたはシラー VI=ヴィオニエ RL=リースリング PRO=グレーラ CB=シュナン・ブランまたはシュナン ME=マカベオ PL=パレリャーダ XA=チャレッロ 甲州=甲州 (2)色 (3)希望小売価格 (4)問い合わせ先 ドイツ――皇帝たちから愛された気品あるリースリング
Robert Weil Riesling Sekt b.A. Extra Brut 2020(ロバート ヴァイル リースリング ゼクトエクストラ ブリュット 2020)
(1)RL100% (2)白 (3)6050円(参考価格) (4)ファインズ
1875年創業の歴史あるワイナリー。時の皇帝が好んだワインは正餐会のメニューにも記されている。ブルーのラベルが映えるゼクトはエレガントで、ドザージュには銘醸畑グレーフェンベルクのシュペートレーゼを使用。ドイツでは辛口から甘口までさまざまな白ワインが生産されています。1986年、EUの全加盟国を対象にスパークリングワインの呼称や表示についての規定が整い、100パーセントドイツ産のベースワインから造られた製品のみ「ドイチャーゼクト」の表示を認可。「ゼクトb.A.」は、ラベル上に使用ぶどうの生産地の表記が義務づけられました。
オーストリア――個性が光る固有品種グルビー
Steininger Grüner Veltliner Sekt 2018(シュタイニンガー グリューナー・フェルトリーナー ゼクト 2018)
(1)GV100% (2)白 (3)4730円 (4)エイ・ダヴリュー・エイ
シャンパーニュ訪問を機にゼクト造りを始めたシュタイニンガーは、オーストリアの発泡性ワインの先駆者。伝統的製法によるワインはすべて単一品種で醸造し、最低18か月間の瓶熟。白こしょうやスパイスのニュアンスが美味。ワイン生産量は全世界のわずか1パーセント程度ながら、多様性と高品質を誇ります。全ぶどうの栽培面積の3分の1強は固有品種グリューナー・フェルトリーナーで、愛称はグルビー。特徴的な香りは和柑橘やわさびと相性がよく、和食全般に寄り添う逸品。2016年制定のオーストリアのゼクトは3段階のピラミッドで構成され、規定は厳格です。
チリ――自然に恵まれた大地の味わい
Errazuriz Método Tradicional Extra Brut(エラスリス メトッド・トラディショナル エクストラ ブリュット)
(1)CH65%、PN35% (2)白 (3)8250円 (4)JALUX
今春、チャドウィック当主が満を持して発表したのがスパークリングワイン。5年間の瓶熟を根気強く待った希少アイテム。エンブレムをまとった重厚感あるボトルから醸し出されるジンジャーのアロマや熟したカリンの味わい。1980年代、カリフォルニアを手本に自国のワイン改革を推進。コンクールで高得点を得ることで輸出も大幅に増加しました。エラスリスのエデュアルド・チャドウィック当主が、仏銘醸ワインと自らのワインとのブラインドテイスティングを仕掛け、勝利したベルリンテイスティングは業界を驚愕させ、チリワインの凄さを世界に示しました。
アルゼンチン――高地アンデスが育んだ情熱の果実
D.V. Catena Nature NV(DV カテナ ナチュール NV)
(1)CH70%、PN30% (2)白 (3)3850円(参考価格) (4)ファインズ
スパークリングワインに使うぶどうは、アンデス山脈の麓にある自社畑の中でも、特に冷涼なエリアからセレクト。糖分3グラムだと、ベースワインそのものの酒質が明確に出るので、丁寧に収穫したぶどうであることは一目瞭然。ぶどう栽培の歴史は16世紀から始まり、19世紀後半にはフランスから高貴品種が移植され、欧州の醸造技術も伝えられました。アンデス山脈の東麓にあるアルゼンチン最大のワイン産地メンドーサは、全生産量の7割を占めています。アルゼンチン最大級のワイナリー「カテナ」は高標高栽培のリーダー格で、世界に比肩する生産者です。
インド――世界を凌駕する勢いのアジアの星
Sula Brut Crémant de Nashik NV(スラ ブリュット クレマン・ド・ナシク NV)
(1)CH80%、RL&VI20% (2)白 (3)3476円 (4)出水商事
1997年、シリコン・ヴァレーで勤務していたラジーヴ・サマント氏が「スラ・ヴィンヤーズ」を創設。収穫年により使用品種のブレンドが異なる。白い花やカルダモンのアロマ、ミネラル感があり、ピュアな印象。2022年4月、JETRO(独立行政法人日本貿易振興会)の調査によると、インドの都市部では外食の多様化を背景に、近年ワインの消費が拡大し、年間消費量は約350万ケースに伸びています。特に、凜としたスタイルのソーヴィニョン・ブランを発売しワイン界に衝撃を与えたスラは、世界の品評会で好成績を誇り、その勢いは止まりません。
ニュージーランド――心弾ませる透明感ある果実味
Cloudy Bay Pelorus(クラウディー ベイ ペロリュス)
(1)CH70%、PN30%(収穫年により異なる) (2)白 (3)4730円 (4)MHD モエ ヘネシー ディアジオ
ベースとなるワインはステンレスタンクとオークの大樽、フレンチオークの小樽で発酵と熟成を行い、8か月熟成。クリーミーで清涼感があり、柑橘系果実のアロマと瓶熟による複雑味が口中に広がり、余韻も長い。始まりは1819年、豪州から派遣された神父が北島に100種余りのぶどうの苗木を植樹。1973年にはマールボロでソーヴィニヨン・ブランの初植樹と醸造の成功で、高品質の産地であることを示しました。デヴィッド・ホーネン氏は85年にクラウディーベイを発表。ネーミング、ラベル、魅力的な味わいは鮮烈な印象を与えました。
表示価格はすべて税込みです。 監修・取材・文/青木冨美子 撮影/本誌・坂本正行
『家庭画報』2023年7月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。