令和の御代の新しいかたち 第3回(全5回) 天皇皇后両陛下は令和5年6月9日、ご結婚満30年をお迎えになります。長きにわたり、お二人で語り合うことを大切になさり、喜びも悲しみも分かち合いつつ歩んでこられた両陛下。令和2年春以降、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、受け継がれてきたご活動を同じように行うことさえ困難を極めましたが、その厳しい局面にあっても模索と工夫を重ねられ、国内外のかたがたとの交流の道を、新たなかたちで拓かれました。そのご足跡をご紹介いたします。
前回の記事はこちら>> おもてなしはお二人で──
丸テーブルの「国際親善」
天皇陛下の大切なご公務の一つに、国際親善を目的とした外国要人とのご面会があります。来日中の各国の元首などの賓客とお会いになることを「ご会見」、外国の首相夫妻や大使などの賓客とお会いになることを「ご引見」といいます。
マクロン大統領夫妻をお出迎えになり、フランス語で挨拶される両陛下。皇后陛下はご会見や午餐でもほとんど通訳を介さず、フランス語や英語でやりとりなさったという。写真/朝日新聞社賓客がご夫妻である場合は皇后陛下とご一緒に接遇されることが多く、ご即位の年の令和元年にはお二人で実に50回近いご会見・ご引見に臨んでおられます。30分程度の短時間であることから、語学がご堪能な両陛下はほとんど通訳を介さずに賓客と親しくお話しになることもしばしばです。
令和元年6月27日、皇居・宮殿でフランスのマクロン大統領夫妻と会見なさる両陛下。当時は、天皇陛下は主賓、皇后陛下は主賓の夫人と、それぞれ一対一で歓談されるのが慣例だった。写真/朝日新聞社コロナ禍で回数が激減していたご会見やご引見ですが、最近は少しずつ両陛下お揃いで臨まれる機会が増えてきました。その外国要人との面会シーンに、令和流ともいえる変化が起こっているのをご存じでしょうか。
以前は賓客がご夫妻の場合、4脚の椅子が横並びに置かれ、天皇陛下は主賓と、皇后陛下は主賓の夫人と、一対一で別々にお話しになっていました。これは上皇上皇后両陛下の時代から踏襲されてきたスタイルです。
令和4年11月2日、ドイツのシュタインマイヤー大統領夫妻とのご会見。感染防止対策のため、マスクの着用に加え、椅子も以前よりかなり距離を保って置かれている。写真/宮内庁提供ただ、新型コロナウイルス感染症が蔓延して以降は、椅子と椅子の距離が離され、しかもマスクを着用なさったままでのご面会を余儀なくされました。これではお互いの表情もわかりにくく、なかなか会話も弾みづらかったのではないかと推察されます。
シュタインマイヤー大統領夫妻とのご会見の日から2週間後の令和4年11月16日、ポルトガル議会のサントス・シルバ議長夫妻とのご引見の際、初めて丸テーブルが登場。同じ御所の小広間だが、雰囲気が一変しているのがよくわかる。写真/朝日新聞社ところが、昨年11月、ポルトガル議会議長夫妻とのご引見から、中央に新たに丸テーブルが登場。両陛下と賓客のご夫妻の4人がご一緒に会話を楽しまれる形式に変わったのです。丸テーブルの形状も相まって、場の雰囲気がより和やかになり、親密度が増しているように見受けられます。
円卓を囲んだお二人でのご接遇が醸し出す、和やかな雰囲気。令和5年3月7日、ルーマニアのヨハニス大統領夫妻と丸テーブルを囲んで懇談なさる両陛下。お二人お揃いでのご接遇と柔らかな印象の円卓が、より親密な雰囲気を醸し出している。写真/宮内庁提供これもオンラインの活用と同様に、両陛下が紡ぎ出された令和の新しいかたちといえます。厳しい状況にあっても、国内外の皆さんと少しでも打ち解けて会話ができるよう、模索と工夫を重ねられているのでしょう。
協力/宮内庁 文/大山直美
『家庭画報』2023年7月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。