藤野幸信さんが選ぶ「季節の贈り花」 今、この花を贈りたい! 「フルール トレモロ」オーナー 藤野幸信さんが“今贈りたい”おすすめの花をセレクト。その花を使った、新作ブーケ&アレンジメントをさまざまなバリエーションでお届けします。
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ごく淡いピンク系のシャクヤクやバラに、フレッシュアジサイの‘マジカルレボリューション’、ニゲラ、染めのアスチルベのブルーを合わせると、こんなに華やかで涼しげな雰囲気に。とくにアジサイのブルーはボリューム感もあり、アクセント効果も抜群です。誕生日が近い2人のお母さまにお揃いのアレンジをお届けしました。フレッシュとアンティーク。アジサイには2つの魅力があります!
雨に濡れながら咲くアジサイの、なんと色鮮やかで美しいことか!こんなにきれいな花色を見られるなら、雨の日も悪くないなと感じています。
切り花のアジサイは少し早く、4月半ばから出回り始めます。ブルー系・ピンク系、どちらも澄んだ花色が美しく、ボリューム感もあるので贈り花にもよく利用します。6月末くらいまで出回るアジサイは、切り花では「フレッシュ」と呼ばれ、ちょうどこの時期に咲いているアジサイをカットして利用するのと同じ状態です。
ところが梅雨が明け、露地栽培では枯れてきたアジサイの花房を剪定して落とす時期になっても、切り花のアジサイは出回ります。これは色変わりしたり、退色したアジサイで、いわゆる秋色アジサイ。「アンティークアジサイ」「クラシックアジサイ」などとも呼ばれ、秋遅くまで出荷が続きます。
たとえば鮮やかなブルーが魅力の‘西安(シーアン)’という品種は、退色して少しくすんだ状態になると‘西安クラシックブルー’という名前で市場に出ます。どちらも同じ品種なのですが、クラシックとつくことから秋色アジサイなのだとわかります。
6月後半から秋色アジサイも出回り始めるので、フレッシュなのか、アンティークなのか、品種名をよく確認して入手するようにしています。
5月の後半に入手した‘西安’。くすみのない美しいブルーを見ているだけで爽やかな気分になります。8月に入荷した秋色アジサイの‘西安クラシックブルー’。フレッシュな‘西安’からの退色が絶妙に美しい!秋色アジサイはその年の夏の気温や降水量が花色の変化に大きな影響を与えるため、露地栽培では美しい花色を残すのが難しいそうです。
美しいブルー系を生産してくださる千葉県南房総の「青木園芸」さん、ピンク系のおもしろい色を出すのが得意な山形県の「アキバナーセリー」さんの秋色アジサイは花屋仲間の間でも人気が高く、タイミングよく入手できると、その美しさに惚れ惚れしながら贈り花を制作しています。
大きいものでは大人の顔くらいのサイズにもなるアジサイの花房ですが、贈り花では小ぶりな花房のほうが利用しやすく、私の場合は直径15cm以下のものを選ぶようにしています。
市場ではちゃんと花房の直径も記載されます。これくらいの花房だと、ほかの花とも合わせやすく、何より美しいブルー系がたくさんあるので、アクセントとして加えると効果抜群!
フレッシュのアジサイの心が透くような花色、秋色アジサイのロマンチックな雰囲気、どちらもアジサイの魅力だと思います。年齢に関係なく人気のあるアジサイを贈り花でもぜひ利用してみてください。
藤野幸信/Yukinobu Fujino
広島駅からほど近い段原の骨董通りにある「fleurs trémolo」(フルール トレモロ)オーナー。広島大学大学院理学研究科生物科学専攻を終了後、花の道に進んだ異色の経歴。感動する花束を多くの人に届けたいという思いから、市場からだけでなく自ら生産者情報を入手してお気に入りの花を集める。何種類もの花を使ったブーケは、エレガントでナチュラル。著書
『大切な人への贈り花』も好評。
https://www.fleurs-tremolo.com 『人気フローリストが教える フラワーアレンジのデザイン&ヒント78 大切な人への贈り花』
誕生日、結婚記念日、ウエディングなど、78例のブーケ&アレンジメントを色別に掲載したオールカラーの大判の単行本。色別花図鑑コラムや全国の生産者データなどお役立ち情報やインデックスも充実。大切な人へ花を贈る際のヒントが満載です。