2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の北条時政役で話題となった坂東彌十郎さんが、三大狂言の一つである『義経千本桜』で梶原景時役を勤める。
「僕が初めて『義経千本桜 すし屋』の梶原景時を演じたのは2000年の巡業公演で片岡我當のお兄さんがいがみの権太を演じられたときでした。このときの梶原は、我當のお兄さんのお考えで白塗りに烏帽子を被って勤めさせていただきました。一方で2002年のこんぴら歌舞伎で片岡仁左衛門のお兄さんが権太をお勤めになったときの梶原は、いわゆる赤っ面の扮装をさせていただきました。
歌舞伎では主演のかたが演出家でもあるので、役に対するお考えが異なります。主役が演じる“型”に周りが合わせなければなりません。今回ご一緒する仁左衛門のお兄さんは役を深く掘り下げられるかたで、独自のお考えがあって寿司桶の置き方もほかのかたとは違います。前に演ったことがあるから同じことをやればいいということではなく、稽古までにどうでも動けるようにいくつか道を作っておかなければなりません」
『義経千本桜』の梶原平三景時。2002年4月、旧金毘羅大芝居 ©松竹彌十郎さんは梶原だけでなく権太の父親である弥左衛門役の経験もある。
「演じる役によって舞台上の景色は違いますね。梶原は弥左衛門に平維盛の首を渡せといいますが、頼朝の命で維盛を助けることはわかっています。そのことは伏せているので、逆にいえば権太はだまされているのですが、権太には気づかれないように演じなければなりません。『義経千本桜』は源平合戦の物語ですが、歌舞伎では美談として描かれることもあります」
坂東彌十郎
1956年東京都生まれ。初代坂東好太郎の三男。1973年5月歌舞伎座『奴道成寺』の観念坊で坂東彌十郎を名乗り初舞台。1978年から15年間、3代目市川猿之助の門下に入り、澤瀉屋一門の若手で構成された「二十一世紀歌舞伎組」のメンバーとして活躍。その後18代目中村勘三郎とも共演するようになり、コクーン歌舞伎、平成中村座の公演にも参加している。
今月の歌舞伎
【歌舞伎座】
歌舞伎座新開場十周年
六月大歌舞伎
~2023年6月25日
●昼の部 11時開演
一、『傾城反魂香』土佐将監閑居 浮世又平住家 二、『児雷也』 三、『扇獅子』
●夜の部 16時開演
『義経千本桜』木の実 小金吾討死 すし屋 川連法眼館
※坂東彌十郎さんは夜の部『義経千本桜』の梶原平三景時役で出演します。
1等席1万8000円ほか
チケットホン松竹:0570-000-489
【国立劇場】
初代国立劇場さよなら公演
令和5年6月歌舞伎鑑賞教室『日本振袖始 ―八岐大蛇と素戔嗚尊―』
人気の演目を通して歌舞伎の魅力を楽しんでいただけるようにと企画された公演。「歌舞伎のみかた」では歌舞伎俳優が見どころをわかりやすく解説してくれる。出演は中村扇雀、中村鶴松、中村虎之介ほか。
~2023年6月24日
11時開演・14時30分開演
※6月23日は14時30分・19時開演
解説「歌舞伎のみかた」中村虎之介
『日本振袖始―八岐大蛇と素戔嗚尊―』
一般1等席4500円ほか
国立劇場チケットセンター:0570-07-9900
表示価格はすべて税込みです。
撮影/岡積千可 構成・文/山下シオン ヘア&メイク/AKANE
『家庭画報』2023年7月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。