近年、たるみの原因究明が進み、解決策が増えてきています
資生堂 みらい開発研究所 フェロー
江連智暢さん老化による顔かたちの変化「たるみ」を研究領域とし、そのパイオニアとして世界をリードし続けている。国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)本大会での4大会連続受賞をはじめ、国内外のさまざまな学会で受賞歴多数。まずはフェイスラインのたるみを自覚することから
「フェイスラインの形状変化は自分では気づきにくく、たるみの進行具合を正しく自覚している人は少ないという調査結果があります」と、資生堂の江連智暢さんは指摘します。その理由は鏡を見る角度。
「自分で見る正面顔はたるみがわかりにくいのです。たるみの最終段階として頰の外側の皮膚が下垂するとフェイスラインの境目があいまいになり、斜め45度から見ると顕著にわかります。実はそれこそが他人の目に映る顔。自分目線と他人目線では見た目に約10歳の開きがあることもわかっています」。
たるむ原因は周知されている真皮構造の変化や表情筋の劣化のほかにも皮下脂肪の増大、加齢に伴う骨の変形などさまざまあり、急テンポで解明が進んでいます。その一例が、資生堂の最新知見である“立毛筋(毛根に付着し、毛を逆立てる筋肉)”とたるみの関係。
「たるみは重力の影響で起こる現象なので、皮膚にはもともと重力による変形に抵抗する仕組み(抗重力システム)があるのではないかと考えました。前段階として、これまで皮膚内部を三次元で観察していたところから、“動き”を再現する四次元での解析技術の開発が進みました。そこで重力で変形する皮膚を観察したところ、変形に抵抗する場所があり、そこには立毛筋が存在していることがわかったのです。加齢により立毛筋の機能が低下することで皮膚の重力抵抗が難しくなり、たるみが進むと考えられます」。
江連さんからは、ストレッチが立毛筋の活性化につながるとの朗報が。たるみを加速させる要因は人によって微妙に異なるため、「その要因に即したケアを行うことが重要」とのこと。
化粧品領域に限らず、たるみの対策法が増えている今、見た目年齢を巻き戻すことも案外たやすい時代なのです。
資料提供/資生堂変形に抵抗性を示す部位に立毛筋が存在皮膚を均等な力で変形させて、その動きを4Dデジタルスキンで解析。変形に抵抗性を示す青色の部位に、立毛筋が存在する傾向が認められた。
資料提供/資生堂立毛筋の加齢による変化立毛筋が重力に逆らい皮膚の動きを抑制していることが確認できるが、加齢変化で立毛筋が衰えることがわかった。
〔特集〕たるみ悩みを最短ルートで解決 若さはフェイスラインで決まる(全11回)
モデル/桐生ちづる イラスト/緒方 環 取材・文/佐藤由喜美
『家庭画報』2023年7月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。