真のジュエリー好きが惚れ込む「ブチェラッティ」。その魅力を語り尽くしたい!
銀座の新緑が眩しく輝くある日、スタイリスト・おおさわさんと編集長・鈴木が訪れたのは、並木通りの「ブチェラッティ 銀座本店」。2021年秋に日本初の旗艦店としてオープン、ミラノの本店を彷彿とさせる落ち着いた雰囲気のブティックです。アイコニックなジュエリーが見られる1階と、ハイジュエリーやシルバーのオブジェやテーブルウェアなどのホームコレクションをふんだんに揃えた2階との2フロア構成になっています。
2階のフロアには銀器やオブジェ、カトラリーなどが並びます。店内に飾られたデザイン画。職人たちはこの絵だけを指針にジュエリーを一点一点作るのだそう。今回、「ブチェラッティに取材に行く」と決まったとき、小躍りして喜んだおおさわさん。大好きなブランドの魅力を、もっと知ってもらいたい!と意気込んでいます。さて、どんなお話が出てくるでしょうか。
ルネサンスの時代から継承されている、驚くほどに繊細な彫金技術
おおさわ:取材用のお世辞ではなく、本当に大好きなブチェラッティを訪問できて、今日はとても嬉しいです。
鈴木:その魅力をおおいに語っていただければと思っていますが、そこまで「好き!」になったきっかけは何だったんでしょうか?
おおさわ:オープンワークのリングとの出会いです。中でも「チュール」というコレクションは金細工のレースとでもいいましょうか、ハニカムと呼ばれる蜂の巣型の繊細な加工が施されているのですが、その美しさに衝撃を受けました。
鈴木:これは本当に美しいですね。私は最初、糸状の金属でレースのように編んでいるのかな?と思ったのですが。
1枚のゴールドプレートを幾何学模様やハニカム状に細工しています。右から、「ロンビ」リング(YG×WG×ダイヤモンド)181万5000円 「チュール」リング(WG×ダイヤモンド)275万円/ともにブチェラッティおおさわ:違うんです! ゴールドのプレートをハニカム状に細工しているんです! 光にかざしていつまでも見つめていたいほど……ため息が出る完璧な職人技です。
鈴木:ブチェラッティの職人さんの手仕事は繊細で丁寧なので、目に負担をかけないために2時間ごとに休憩をとることになっていると聞いたことがあります。
おおさわ:集中して目を酷使できる限界が2時間なんでしょうね。
鈴木:そうですね、なんといってもルネサンス時代から伝わる彫金技術を、今も頑固に守り続けている工房ですから……。
ミラノにあるブチェラッティのアトリエとブティック。手をかければかけるほど、金属は美しくなる――それがメゾンの哲学
おおさわ:ブチェラッティのアイコンジュエリーに「マクリ」というコレクションがあります。リガート技法といって、金属の表面に細い線を彫り込むことで、柔らかさを表現しているのですが、本当にシルクみたいな質感なんですよ。とても金属とは思えない!
鈴木:先ほどのチュールも、このマクリも、フラットな金属部分がどこにもないですよね。表も裏も、サイドまで、すべての面に職人の手が施されています。ダイヤモンドも使われてはいるのですが……どちらかというと石は添えものというか、金属の美しさを目立たせるために使われているような気がします。
おおさわ:手をかければかけるほど金属は美しくなるというのが、このメゾンの哲学。ある意味、頑固なんですよね。だからとにかく、作るのに時間がかかる。
表面からサイドまで、細工をしていない部分が一切ないマクリ。ブチェラッティのアイコンといわれる由縁です。上から、「マクリ」リング(YG×WG×ダイヤモンド)90万2000円 同リング(YG×WG×ダイヤモンド)63万8000円/ともにブチェラッティ鈴木:これだけ特別な技法を操れる職人さんは、そうたくさんはいないでしょうし。
おおさわ:親子代々ブチェラッティの職人という方がアトリエには多いそうですが、おっしゃる通り職人の数は限られるため大量生産は難しいといいます。そういう意味でも希少なジュエリーなんです。
鈴木:おおさわさんが偏愛する理由が少しずつわかってきました。そういえばブチェラッティは、ジュエリー職人育成のために、イタリアのジュエリーの学校(Scuola Orafa Ambrosiana スクオーラ・オラファ・アンブロジアーナ)で、金細工のコースを開講しているそうです。優秀な学生はブチェラッティのアトリエに迎えられるのだとか。
おおさわ:金細工って、ひとつの文化なんですよね。この連載のテーマは「一生もののジュエリーを探す」ですが、人類が守り伝え、後世へ受け継ごうとしている文化を身にまとうことも、「一生もの」を選ぶ際の大切な視点になるのではと、私は思うんです。
重ねられるだけ重ねる! ブチェラッティはそれでもつけ過ぎの印象になりません
鈴木:では実際に、おおさわさんならではのコーディネート術を拝見できますでしょうか?
おおさわ:指に、手首に、これでもかというくらい重ねるのが、ブチェラッティの“大人な装い方”です。実は以前、仕事で海外に行ったとき、とある高級バッグブランドの女性デザイナーにお目にかかったんですね。その方のつけていたジュエリーが、すべてブチェラッティだったんです。
鈴木:やはり重ねづけを?
おおさわ:もう、どれだけの財力?と思うほど(笑)、重ねていました。でもそれが、本当に格好よかったんです。これがピカピカの地金が輝くダイヤモンドや色石だったら、やり過ぎになってしまうと思うのですが、ブチェラッティの控えめで気品ある佇まいは、重ねるほどにエレガントになっていく――というお手本のような装いでした。
いくつ重ねても気品があるとおおさわさん。右上から「マクリ」ブレスレット(WG×ダイヤモンド)99万円 同ブレスレット(WG×YG×ダイヤモンド)352万円 同ブレスレット(YG×WG×ダイヤモンド)390万5000円/すべてブチェラッティ鈴木:やはり日本人だと、チャレンジしやすいのはリングの重ねづけからでしょうか?
おおさわ:リングももちろんいいけれど、私はマクリのバングルをおすすめしたいです。カジュアルからドレスアップまで、さまざまなオケージョンに似合うデザインで、まさに大人の格好よさを演出してくれます。金属の色や太さ違いを合わせてみてください。
鈴木:イエローゴールドとホワイトゴールドを重ねるのも洒落ていますね!
お気に入りをたっぷりレイヤードしたコーディネート。「年齢を重ねた手もとには、これくらいの迫力が必要です」とおおさわさん。「エトワレ」ペンダント(YG×WG×ダイヤモンド)96万8000円 人さし指につけた「ロンビ」リング(YG×WG×ダイヤモンド)181万5000円 薬指に重ねた「マクリ」リング(指先側)(YG×WG×ダイヤモンド)63万8000円 (付け根側)(WG×ダイヤモンド)63万8000円 重ねづけした「マクリ」ブレスレット(細)(WG×ダイヤモンド)99万円 (太)(YG×WG×ダイヤモンド)390万5000円/すべてブチェラッティレイからインスピレーションを受けたロングネックレス、「ハワイ」の楽しみ方
鈴木:先ほどから店内を見ていて、「ハワイ」というコレクションがとても気になっています。モダンに見えるのですが、創業者が1930年代にデザインしたものと聞いてびっくりしました。
おおさわ:これも一見、ただのチェーンですが、実は糸のように細い金属を手で撚ったものなんです。
2階のハイジュエリーが並ぶスペースでコーディネート談議。ここではハワイのネックレスを二重にしてつけています。金属とは思えないほど、とても軽いつけ心地が魅力。「ハワイ」ネックレス(YG×WG×PG)214万5000円 同ブレスレット(上)(YG)29万7000円 同ブレスレット(下)(YG)37万4000円/すべてブチェラッティ鈴木:単色も素敵ですが、スリーゴールドを組み合わせたタイプが使いやすそうですね。
おおさわ:これは1連、2連でつけるだけじゃなくて、ラリエットにもなるのが秀逸なんです。
鈴木:え? どこに留め具があるんですか? 全然わからないです。
おおさわ:パッと見ではわからないように作るところも技術ですよね。ほら、ここにあります。見慣れるとすぐ探せるようになりますよ。これをネックレスの途中で留めると、ラリエットになるんです。
鈴木:これだけ長いと2連にしてからラリエットにすることもできそうですね。
ラリエットにするととても表情豊かに。「ハワイ」ネックレス(YG×WG×PG)214万5000円 同ブレスレット(細)(YG)29万7000円 (太)(YG)37万4000円 「マクリ」リング(WG×YG×ダイヤモンド)90万2000円/すべてブチェラッティおおさわ:ラリエットは身体の正面だけでなく、後ろ側に垂らすのもおすすめ。髪をきゅっとまとめて、背中の開いたドレスに合わせたり……お洒落の上級テクニックです。
鈴木:撚ってあるから輝きはマット。でも長さとボリューム、そしてつけこなし方次第ですごくグラマラスにもなる。ブチェラッティのジュエリーはどれも幅広いシーンで装える、包容力のあるジュエリーですね。
おおさわ:それもこれも、高度な職人技があってこそ、です。
鈴木:なんだか私もおおさわさんに感化されて、ブチェラッティのファンになりそうです。
ブチェラッティ 銀座本店
東京都中央区銀座 7-5-5 電話03-5537-3281
営業時間 11時~19時
ブチェラッティ電話 03-4461-8336
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