石川・富山・ 福井「北陸」三都物語 第19回(全23回) 石川、富山、そして福井―。2024年に新幹線でつながる北陸3県は、その地の文化を発信する新たなスポットが次々と誕生し、今、最も注目を集めるエリアです。アート、伝統工芸、日本酒や美食処など、魅力溢れる夏の北陸をご案内します。
前回の記事はこちら>> タケフナイフビレッジ(越前市)
まるで美術館! 館内で手作りされる「越前打刃物」。その最適な一本をご案内
福井が国内有数の刃物の産地であることをご存じでしょうか。越前打刃物の歴史は実に700年を数えます。しかし、高度成長期を経て大量生産の波にのまれ伝統の継続が危機に瀕した1970年代、若手職人たちが手を携えて新たな挑戦に踏み出したのが、「タケフナイフビレッジ」の始まりでした。
会社の枠を超えて統一ブランドをつくり、現代的なデザインを提案したり、拠点となる共同工房をつくったり。次代を見据えた努力が実り、越前打刃物は再び輝きを取り戻しました。2020年にはショップと工房を備えた新館がオープン。国内のみならず、海外からも包丁にこだわりを持つ愛好家たちが足しげく訪れるといいます。
光が注ぐ明るい館内は、まるで美術館のよう。奥にはガラス張りの工房が設けられ、実際に職人たちが作業する姿を間近で見ることもできます。
「自分が手にする包丁がどんなふうに作られているか知ることで、愛着も深くなるのではないでしょうか。予約制ですが、鍛造から仕上げまで体験できる包丁教室も人気です」と、事務局長の笠島道代さん。
すべて手作業で作られた個性豊かな包丁の中から、お気に入りを見つけるのはなかなかに至難の業。ショップスタッフに相談しながら、手になじむ感覚を確かめて「自分の一本」を探し出す楽しみが、ここにはあります。
田園地帯で異彩を放つ正三角形のモダンな建築。挑戦を恐れず、伝統の新たな未来を切り拓いてきた職人たちの思いが宿る。組合を構成する13社の製品を扱うショップと刃物の製造工程が無料で見学できる共同工房が設けられ、海外からの個人客も多い。地元だけでなく、今では全国からもこの地を目指して若い職人たちが集結。真剣なまなざしで作業に没頭する姿から、静かな情熱が伝わる。上から、研ぎ師とデザイナーのコラボレーションから生まれた北欧テイストの三徳包丁。エンジュ拭き漆八角柄 2万900円。素材を重ね鍛錬することで生まれる模様が美しい。安立打刃物の三徳包丁1万8880円。刃と柄が一体になったタケフナイフビレッジのオリジナル。1980年代、会社の垣根を取り払って開発した記念碑的デザインは、今見ても斬新。食洗機もOK。クレウス12 ペティナイフ1万1000円。用途や種類、素材からデザインまで、何を選べばいいか、迷うところ。スタッフの丁寧なアドバイスが助けに。案内してくれた笠島さん。タケフナイフビレッジ福井県越前市余川町22-91 TEL:0778(27)7120 (営)9時~17時 年中無休(年末年始を除く)