大原千鶴さん(おおはら・ちづる) 京都・花脊に生まれる。自然に親しみ、生家の料理旅館を手伝いながら料理の心得を学ぶ。3人の子どもを育てながら料理研究家として活動を始め、テレビ・著作・講演など広く活躍。第3回京都和食文化賞受賞。世界文化社刊に『大原千鶴の「新・豆腐百珍」』『旨し、うるわし、京都ぐらし』『大原千鶴のいつくしみ料理帖』などがある。
〔精進の炊き合わせで、しみじみとした夏の夕餉〕水出しした昆布としいたけ、それぞれのだしを合わせ、揚げた野菜や厚揚げを炊き合わせて。こくがあってダイレクトな夏の味がする。
暑い京都の夏。暑さの苦手な私は早朝と夕方の時間を大切にしながら過ごしています。朝はお日様が完全にあがる前に散歩をしたり、時には大原まで車を飛ばして香りの高いちりめん赤紫蘇を買い求めて紫蘇シロップを作ったり。
一緒に朝どりの野菜をいただくのですが、この時期はオクラの花やいろいろなハーブ類も手に入るのでテンションが上がります。芙蓉に似たオクラの黄色い花は眺めて楽しんだ後おひたしにしますよ。他にもいろいろな形のカボチャや丸い賀茂茄子なども沢山。
昨日は賀茂茄子の皮を剥いて素揚げして海老あんかけにしました。やっぱり賀茂茄子は違いますね。とろりとした食感がたまりません。
「上賀茂から届いた賀茂なす驚くほど肉厚で緻密です」(大原さん)。なすは油と好相性。特に身質が緻密で肉厚の賀茂なすは、油で揚げるとトロリとした食感になる。 暑い中ですが、8月の京都はお盆の行事が沢山催されます。クライマックスは言わずと知れた「五山の送り火」ですが、それに向けていろいろな準備をいたします。
まずはお精霊(しょうらい)さんをお迎えしに六道まいりへ参ります。少し涼しくなった夕方の京都の街をぶらぶら歩きながらお参りするのですが、行列に並んであの世まで響くというお迎えの鐘をついてご先祖様の霊をお迎えし、高野槙の葉にその霊を載せて、またぶらぶら歩きながらお家に連れて帰ります。
道中「久しぶりやね、お帰りなさい。こっちではあんなことがあってこんなこともあって」と心の中でおしゃべりしながらね。
そしてお家ではお盆のお供えやお精進のお料理でご先祖様をおもてなしします。
難しそうに思える精進料理も京都には食材が身近にありますから、ささっと作れます。お盆のお料理はお財布にも体にも優しい京都の家庭料理。安心感がありますし冷たいお酒にもよう合います。お酒をいただきながらまた亡くなったご先祖様とおしゃべり。
家ではそんなふうに過ごしますが、お出かけのおすすめは夕方からあちこちで行われている万灯会(まんどうえ)。遠目に見る灯の色は夏の夜にとても美しく映え、京都がいつにもまして成熟した大人の街に見えます。
そんなこんなで暑いお盆を過ごすうち16日の送り火がやってきます。余裕があれば送り火で燃やしてもらう護摩木を納めに行き、お納めした自分の願い事と逝ってしまった多くの人々の事を思いながら送り火を眺め、両手を合わせ、地域の皆さんと盆踊りを踊る予定です。
他にも愛宕信仰の行事である花背の松上げや、24日頃各町内で行われる地蔵盆も私の大切な行事。お祭りはどれも家や地域、ご先祖様や子供たちを大切にする思いから出来たもの。そんな行事事に触れ、癒しをもらいつつ京都の夏を楽しんでいます。
〔夏の元気のもと、紫蘇ジュース〕夏に毎日いただく飲み物は、紫蘇シロップを水や炭酸で割ったジュース。夏バテ知らずです。