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がんの手術を安全に受けるために。患者が事前に取り組むべきことは

2023.07.13

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がんまるごと大百科 第7回【手術編】(02) がんを根治させるには、がんのある部分をできるかぎり取り除くことが重要です。その唯一の方法が「手術」であり、固形がんの多くでは最初に選択される治療になります。今回は手術を安全に受けるために患者が事前に取り組むべきことを中心にお届けします。前回の記事はこちら>>

体調を万全に整えて手術による合併症を減らす


金光幸秀先生(かねみつ・ゆきひで)
金光幸秀先生

国立がん研究センター 中央病院 大腸外科 科長。名古屋大学医学部卒業。名古屋大学医学部第二外科、愛知県がんセンター中央病院消化器外科部を経て、2013年より現職。全国の臨床試験を主導し大腸がんの治療法の確立に努め、『大腸癌治療ガイドライン』の作成にも従事する。

手術の安全性を高めるために術前の準備を怠らない



がんの手術を行うことを決めてから実施するまでの期間は病院によって異なりますが、3~4週間かかります。

一刻も早くがんを切除してほしい患者にとって、この待機期間は長く感じることでしょう。しかし、腹腔鏡下・胸腔鏡下手術の普及により手術が安全に行えるようになったとはいえ、その実施にはリスクが伴います。

また、術後にさまざまな合併症を起こすことも少なくありません(下のコラム参照)。大腸がん手術の場合、手術に伴うリスクに合併症を併発して死亡する確率は、大腸がん以外の腹部手術に比べて0.2パーセント高いといわれています。

「手術の安全性を高めるには術前の準備を怠らないことが肝心です。なかでも併存疾患のスクリーニングが欠かせません。糖尿病や高血圧症などの生活習慣病があると手術のリスクが高まるだけでなく、術後の合併症も増えるため、病状のコントロールが不良の場合は内科で生活習慣病の治療をしてからがんの手術を行うことになります。焦らずに普段どおりの生活をしながら手術に備えましょう」と金光先生はアドバイスします。



【手術を決めてから実施するまでの期間は3~4週間】


●がんの診断から手術決定・手術までの流れ
がんの診断から手術決定・手術までの流れ

国立がん研究センター「がん情報サービス/手術(外科治療)もっと詳しく」および取材を参考に作成




【手術後に起こりやすい合併症】
手術する部位により異なるが創感染や肺炎、痛みが多い


手術後に好ましくない症状や状態を引き起こすことがあります。手術する部位によって合併症は異なり、よくみられるのは創感染や肺炎、痛みです。

■創感染
手術のときにできた創を縫い合わせた部分が細菌などに感染し、赤く腫れて膿が出たり、痛みや発熱などの症状が起こったりする。

■肺炎
手術後に肺の奥にある痰が十分に出せないと、細菌を排出することができず、肺炎を起こすことがある。

■痛み
手術後に麻酔が切れると、手術の創痕が痛む。

■深部静脈血栓症、肺塞栓症
手術中や手術後に長時間体を動かさないでいると足の静脈に血栓ができて、それが血液中を流れて肺の血管に詰まることがある。息切れや胸痛などを突然起こし、命にかかわることもある。

■せん妄
体の異常や薬によって引き起こされる急性の脳機能不全。周囲の状況が理解できず、幻覚、物忘れ、興奮、不眠などの症状が起こる。

■縫合不全
おなかの手術をすると、腸管などのつなぎ目がうまく治らず、創が開いてしまう縫合不全が起こることがある。発熱や腹痛などの症状が出る。

■腸閉塞
おなかの手術をした後、腸の炎症による部分的な癒着で腸閉塞を起こすことがある。便やガスが出なくなり、腹痛、吐き気、嘔吐などの症状が表れる。

■膵液漏
膵臓の周りのリンパ節を取った影響で、膵臓から膵液が漏れ出し、周囲の脂肪を溶かして感染を起こし膿がたまることがある。

■嗄声/させい(声のかすれ)
声帯などを調節する神経(反回神経)の近くを手術した場合、術後に声がかすれることがある。

国立がん研究センター「がん情報サービス/手術(外科治療)もっと詳しく」を参考に作成



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